菜月は頭を殴られたような衝撃を受けた。これまで培った夫婦の信頼が根底から崩れたように思えた。
「徹? どこ?」
書斎にも、子ども部屋にも徹と来客者の姿は見えない。徹が肉を食べた衝撃で、頭が混乱していた菜月は恐ろしい可能性に気付き、寝室に走った。
菜月がドアを開け放つと、そこに居たのは全裸の徹と、同じく一糸まとわない姿で徹にまたがる亜由美だった。寝室の空気は凍る。すると、いつもと変わらない愛らしい顔で亜由美が笑った。
「あら〜! 菜月さんお帰りなさい。おいしそうだからいただいちゃいましたよ」
徹は突然のできごとに言葉を失ったまま硬直していた。
(肉を食べた! 夫婦のベッドで不倫した! よりにもよって亜由美さんと!!!!!)
菜月の頭のなかはぐちゃぐちゃだ。激しい怒りのあまり、言葉が出なかった。
笑っている亜由美とフリーズした徹から目をそらした菜月は、よろよろと階段を降りてリビングのソファに腰掛けた。うつろな菜月の目に映ったのは食べ残されたサラミのピザ……。
無意識のうちに菜月の手はピザを掴み、何度も何度も口に運んでいた。
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