究極のスーツをつくりました(現時点で)
ここしばらくコロナ禍の影響もあり、ハード&タフなカジュアル推しできましたが、今回は心機一転、僕のスタイルの軸をなすスーツを紹介したいと思います。ちょっと前置きが長くなりますが、少しの時間、お付き合いいただければ幸いです。
Brilla per il guisto(ブリッラ ペル イル グスト)のディレクターである無藤和彦さんは、僕のお洒落の師匠のひとり。ビームスでアルバイトしていた頃から可愛がっていただいております。
僕が編集者になってからも、ことあるごとに相談に乗ってもらい、困ったときは無藤さん(神)頼み。特にLEON時代は、無藤さんが編集部から近いビームス銀座店の店頭にいたこともあり、よくお邪魔したものでした。
「大人の男の色気が何なのか?」を考えていたときに、デザインなどのこれ見よがしな派手さはうわべだけ、色気は普通の格好の中に宿ると教えてくれたのが無藤さん。そんな無藤さんがBrilla per il guisto(ブリッラ ぺル イル グスト)の立ち上げ時に「今度、これ作るから着てみなよ」とすすめてくれたのがカシミアのストライプスーツでした。それが『LEON』の「いちばんモテるのは都会の夜に溶け込むミッドナイトスーツ」という企画につながり、大ヒットを飛ばしたのは本当に痛快でした!
以来、ちょっと贅沢ではありますが、カシミアスーツはここ一番のときの勝負服として欠かせない存在に。すでにビームスでのオーダーは3度。で、今回が4度目となります(笑)。
無藤さんから連絡があったのは、今年のピッティ出張から帰国した2月頃だったでしょうか。「めちゃくちゃ良い生地が入荷したからスーツ作らない?」というLINEが突如届きまして、全幅の信頼を寄せている無藤さんが言うなら間違いないでしょう、というわけですぐ生地をチェックしに行きました。無藤さんいわく、カシミアとひと口で言っても千差万別、スーツに向き不向きがあると言います。
無藤さんが、用意していたのはロロ・ピアーナ社の「SPUN CASHMERA(スパンカシミア)」。カシミアの中でも最上級の原毛でしか生産できない生地だそうで、触った途端にいままでカシミアだと思っていたものは何だったの?というレベルでした。しかも、打ち込みがしっかりしていてシワになりにくいし、膝がぬけにくいのも特徴なんだとか。
もう、後には引けません。これさえあれば、の究極スーツを作るしかない、と……。そこで僕が現時点で考える究極の3着をオーダーしました!
ネイビー無地は3ボタン段返りの2パッチのジャケットに1プリーツスラックス、グレーの6ボタンダブルには2プリーツのスラックス、ブラックは干場モデルとして特別にお願いしたものでジャケットはナローラペルにゴージ位置を低めにした2ボタン仕様に、スラックスは1プリーツ入りにして少しだけモードな気分に仕上げました。
3着大人買いしたのには理由があって、バラして着られるという想定のもと。ネイビーとグレーは鉄板ですから最初からオーダーすると決めていましたが、あとになってあまりに生地が魅力的だったのでブラックも追加してしまいました。
だって、これラグジュアリーブランドなら一着60〜70万円はするような逸品ですよ。ちなみに製作は、日本を、いや世界を代表するテーラーリング技術に定評があるリングヂャケット。生地量には限りがあるため、数量限定での販売になりました。しかも予約を受け付けての受注販売ですから、気になった人はショップに相談してみてください。
スーツ自体の存在感や高級感、上質さがダダ漏れなんで、早く着たくてたまりません。コロナが沈静化した暁には、これで大人の男の色気を振りまいてやる!!(苦笑)
Photo:Ikuo Kubota(OWL)
Text:Toshiaki Ishii