90年代スタイルにぴったりの夏の足元を発見!
コロナ自粛の影響で「新しい日常」の風景として定着しつつあるのが、テレワークやリモート会議、リモート打ち合わせ、そしてオンライン飲み会でしょうか。それに加えて僕の場合、飛躍的に増えたのが InstagramやYouTubeでのライヴ中継です。
4月以降、予定していたイベントの出演がほとんどキャンセルになったことから、止むを得ず始めた試みでしたが、やってみると意外に楽しいものですね。
このペルノイ×ゼウスのサンダルは、岩手県盛岡市にある菅原靴店のバイヤー兼代表取締役の菅原誠さんとのインスタライヴで「お互いのリコメンドアイテムを紹介し合う」企画を行ったときにおすすめしてもらった一足。誠さんがこれを出してきた瞬間、90年代のプラダを思い出しました。さすが、僕の好みを知り尽くしている、誠さんらしいチョイスです。
菅原靴店の三代目・誠さんには、坪内浩さんと僕が手がけるWHを取り扱っていただいている関係で、以前から親しくさせていただいているのですが、彼はとにかくパワフルで情熱的。
1950年創業の老舗の舵取りを任されて以来、「靴から始まるファッションの楽しさを提案する」というポリシーのもと、もともと靴屋だった店舗を、まるで小さな百貨店のようにトータルコーディネイトができる空間に発展させています。しかも、その品揃えは都内にあってもまったく引けをとらないほど! 上質なイタリア靴を中心に、マニアをも唸らせる国内外の名品がずらりと並んでいます。
ちなみにペルノイというのは菅原靴店のオリジナルレーベルで、誠さんがイタリア留学で身につけた語学力を武器に、現地のブランドや工場に直接交渉・オーダーしてつくっています。
今回紹介するゼウスは、南イタリア・プーリア州バーリに拠点を置くDE.VI.L.SHOES社のオリジナルブランドなんですが、ここにコラボを持ちかけるなんて、一地方のお店のバイヤーとは思えない目利き力・行動力ですよね。イタリアの国内事情に精通しているのはもちろんですが、少しでも新しく上質なもの、素晴らしいものを岩手の人たちに紹介したいという、誠さんの熱意がビシビシ伝わってきます。
それでは本題のサンダルです。まずはこのソールを見てください。フッドベッドを含めて約3.5センチのボリュームがあり、さらにシャークソール風になっているため、サイドから見てもデザインに遊び心が感じられるのが魅力。アッパーのレザーは一枚仕立てで、履くほどに柔らかく足になじんでいきそうです。
通常、こういったストラップ使いのサンダルはカジュアルなイメージが強くなりがちですが、このサンダルはスポーティなソールと気品あるアッパーの掛け合わせが絶妙ですよね。
ゼウスのレザーサンダルは、独自の工程を経てつくられていて、未加工の状態で仕入れた牛革を、型をつくった後、植物由来の天然色素で徐々に染め、仕上げには刷毛を使って手作業で色付けしているそうです。そして最後に、外気に触れさせて乾燥させたサンダルは、TUFFATO(トゥッファート)と呼ばれる味わい深い色合いに。
この工程は極めて正確な作業が求められ、生産に時間がかかるという理由から、今ではほとんど行われていないんだとか。豊かな経験と技術力に裏打ちされた手間隙が、独特の高級感につながっているんですね。
これだったら普通のドレス靴と同じように、ウールやリネンのドレッシーなスラックスに合わせても違和感なさそう。お洒落して出かけられる日が来るのが、待ち遠しくてたまりません!
Photo:Ikuo Kubota(owl)
Text:Toshiaki Ishii
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