やっぱり男の行き着く先はテーラードと実感
このスーツをオーダーしたのは14年ほど前。『OCEANS』編集部に在籍していた時代です。
当時は、トム・フォードがグッチを去り、自身のブランドを設立したころ。その影響もあり、やっぱり男の行き着くところはテーラリングだなと、改めて思い直した時期でした。
ただ、あの世界観に憧れる一方、“力強く、タフでしかもセクシーであるべき”というコンセプトに基づいて誇張された幅広のラペルやフラップなどは、どう考えても自分には似合わない。値段が高過ぎて手が出なかったこともありますが、自分流のオーセンティックなデザインで長く着られるものとして考えたのが、この2着でした。


そこで、『LEON』在籍時からお世話になっていたミツルストラーダのオーナーであり、デザイナーの安居満さんに相談したところ、一からつくってくれるということなり、生地選びはもちろん、デザイン画まで自分で描かせてもらいました。
スーツのオーダーにハマっていたとはいえ、そこまでやるのはプロの手前、失礼かもしれないと思いながら、恐る恐る取り出したのですが、そこが安居さんの懐の深さ。ご快諾いただき、安心してスーツづくりを進められた記憶があります。

自分が特殊な体型なのか、完璧主義者なのかはさておき、既製品だとサイズは46。でも、肩幅は48のほうがしっくりくるのですが、48だとどうも全体のバランスが悪い。それに対して46は、前述の肩幅のほかにもVゾーンが狭いような気がして、なかなか気に入るものに巡り会えないのです。
特に、正統派のスーツはサイズは命。その点、ミツルストラーダのスーツって、パターンメイキングが絶妙なんですよね。独特のラグジュアリー感もありますし……。

生地は、グレー無地、グレンチェックともカシミヤ混のフランネル。ディテールはラペル幅からVゾーンの広さ、ウエストの絞り加減、胸ポケット位置、着丈に至るまで、事細かに決めました。パンツは1アウトプリーツの仕様です。

長く着用できる冬のスーツとして仕立てたのですが、いま着ると少し野暮ったい感じがしたので、最近、行きつけの浅野洋品店でお直ししました。肩を薄いパッドに取り替えてなで肩に見えるように、着丈は2センチほど詰めています。

グレンチェックのほうは柄行きが大きくて、いまの気分ではないのですが、無地のほうは現役バリバリ。登板回数が多過ぎて生地が薄くなってきたので、大切に着ています。







Photo:Ikuo Kubota(owl)
Text:FORZA STYLE