第14回　大人がはまる箱根・仙石原の自然
「仙郷楼」で静寂を共にするデート

2016.3.23 0

明治3年より続く宿源泉掛け流し、白い濁り湯を堪能

大人になるとフラリと訪れたくなる場所、箱根仙石原。その魅力は、一度味わうと病みつきになる豊かな自然にあるのかもしれません。思いつくままに車を走らせても近い距離にあるのが、また魅力の1つですよね。この仙石原は富士箱根伊豆国立公園の特別地区にあたり、建物の高さ、色、装飾、看板などが強く制限されているんです。コンビニの色でさえ、街で見かける色とは異なっているというのですから、環境と自然の美しさにかける想いの強さが伝わってきます。だからこそ、昔の趣がそのままに残っているんですね。

そこに広がる箱根の外輪山の雄峰金時山を臨みながら、時間に身を任せる...まさに大人の贅沢。また戦前は政財界の方々の特殊地域であり、仙石ゴルフコースで昭和天皇が各国外交団と共にプレーをなされていたそうです。

本日ご紹介するのは、そんな箱根仙石原で政財界人・画家・文学者を魅了し続けた、明治3年創業の「仙郷楼」。

こちらの「仙郷楼」の当主、江戸時代に箱根裏関所の常番頭をしていたんです。明治初期に大涌谷で温泉開発をし、湯治場として営業を始めたんだとか。到着してすぐに露天風呂に入れば、眼下には金時山を臨む絶景が広がり、まじりっけのない白い濁り湯を思う存分堪能できます。

源泉かけ流しで泉質は賛成硫酸塩泉。水にもこだわり、使用している水は近くの台ヶ岳という山に涌く天然の山水です。

お風呂が熱い時に加水する水にも同じ天然の湧水を使用しているので、100%自然の恵みに包まれることができます。至福のひとときを、是非。

夕食は色とりどりの板前手作りの懐石料理が並びます。季節というマエストロが絶妙のタクトを振るった旬の食材たち。滋味豊かなその素材を永い研鑽につちかわれた食の匠の手が、麗しく華やかな姿に生まれ変わらせます。月替わりで旬のもの、地のものをいただけますので、リピーターも多いのは納得です。

料理に使う水ももちろん天然の山水です。箱根の命を育んできた甘露の味が料理にも加わりより一層おいしく感じられるでしょう。昨年リニューアルされたお食事処「仙郷楼・陽」は、四季折々の美しい庭園が眺められ、格子でプライベートな空間も守られています。造りたての懐石料理を1品ずつお楽しみください。

食後には数えきれない人々を迎えた暖かい暖炉があるロビーで寛ぐのはいかがでしょう。喧騒を離れ、この空間で温もりを感じてください。

心静かに本を読み過ごすのも、普段できない過ごし方。彼女が本から顔を上げふと横を見ると、暖炉の炎でオレンジがかった彼の横顔。「いつもとは違う物静かな彼も素敵」なんて......。会話なしに、それぞれが静寂を楽しむ。普段にはない新鮮な心地良さを感じることができるので、大人の休日の過ごし方としてお勧めです。

また、こちらは陶芸も愉しむことができるんです。部屋に飾られた花器も仙郷楼の自家製。木々に囲まれた中で、土に触れることで心洗われてください。創作意欲をかきたてながら、あれこれ出来あがりを想像し作成した共同作業は、作品ともども旅先の思い出となるでしょう。「お揃いのものを作りたいな」なんて言葉が、彼女から聞けるかもしれませんね。