火垂るの墓、エロ事師たち、おもちゃのチャチャチャ……。これほど聖と俗を行き来した作家が、他にいただろうか。
12月9日、帰らぬ人となった野坂昭如(享年85)。
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少年時代に神戸で戦火に遭い、妹を失った経験から「火垂るの墓」(直木賞・受賞作)が生まれ、放埒な生活と人間に対する探究心は「エロ事師たち」を書かせた。
ラグビーとキックボクシングを愛したが、それ以上に酒とタバコに耽溺した。昭和の文豪がまたひとつ消えて、年末の寂しさが一段と濃くなった。
野坂は、本物の洒落者だった。
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レザージャケットとボルサリーノのハットをこよなく愛し、トレードマークのサングラスはレイバンだった。
「そんな話はやめてくれ」と泉下から拳が飛んできそうだが、1974年には、ベストファッション賞を受賞したこともある。
英雄がいない時代は不幸だが、英雄を必要とする時代はもっと不幸だ。「野坂のような人物」を平成の世に探してみても、すぐには思いつかない。
ボルサリーノのハットだけでも、真似してみようか。
Text:Yoshihide Kurihara
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