美しい着こなしは、
完璧なフィッティングから生まれます
「カルロ黒部のGENTLEMEN’S STYLE」第9回目は滝沢 滋さん(TAKIZAWA SHIGERU & CO 代表取締役)の登場です。
Takizawa Shigeru Ginzaオープニングレセプションで出迎え下さった滝沢さんは紳士のエレガンスを体現する素晴らしいフォーマルスタイルでした。
この夜のドレスコードはブラックタイ。トップ画像にあるように手結びのボウタイ、フラワーホールにはパープルのカーネーションのブートニエール、スリーピークのチーフと実に美しく完璧な胸元でした。
もともとスタイルが良い滝沢さんですが、全身で拝見させて頂くとフォーマルスタイルほど紳士を知的で美しく見せるものはないと改めて感じます。着丈、袖丈、裾丈とまさに完璧なフィッティングのお手本です。一見するとタキシードなのですが、実は上品な光沢のあるシルク&ウールの黒のシャドーヘリンボーン素材で仕立てられたシングルピークドラペルスーツなのです。
まず注目したのがフロントにボタンの代わりに据えられたブランデンブルクという組み紐飾りです。元はナポレオン時代の騎兵の制服の胸にサーベル除けとして肋骨状に付けられていた組み紐飾りが由来です。その後、装飾化、簡略化してスモーキングジャケットのフロントなどに使用される伝統的ディテールになりました。紳士服のルーツがフォーマルやミリタリーにあるという深い知識と、またお客様を自宅に招くような暖かいホスピタリティを感じます。
次に注目したしたのがウエストコートです。タキシードでは一般的にカマーバンドを使用する方が多いのですが、大きくUの字型にカットされたカマーベストはよりクラシックでフォーマルな雰囲気がします。光沢のある黒蝶貝のフロントボタンとドレスシャツの白蝶貝の対比も実に美しいですね。
足元を飾るのはメッシュ状に加工された光沢の美しいシューズでした。パーティー会場では靴は意外に目立つものなので、このようにきちんと気を配りたいですね。
滝沢さんの見事な着こなしは、完璧なフィッティングによる美しいシルエット、紳士服に対する深い造詣に裏打ちされた細部のディテールに至るまで、紳士のフォーマルスタイルの素晴らしさを我々に改めて教えてくれるのです。
Text:Carlo Kurobe

カルロ黒部(黒部和夫)
カルロ インターナショナル代表 ファッションコンサルタント ファッション評論家。1958年外交官子弟として駐 インドネシア日本大使館で誕生。1983年オンワード樫山入社後、メンズ企画部門を歩む。2014年同社退職後、カルロ インターナショナル設立。国内外のファッション企業のコンサルティングおよびPR業をはじめ、ファッション評論や公演で活躍中