英国ルーツの紳士服の基本を
モダンに見せるイタリアン・テク
「カルロ黒部のGENTLEMEN’S STYLE」第7回目はイタリアの著名シャツメーカー、オリアン(ORIAN)社社長であり親友のフェデリコ・オリアンさん(Federico Orian)の登場です。
ORIAN社がクラシコ・イタリアの伝統をベースに時代のトレンドを上手く取り入れて急成長して来たのはオリアンさんの経営手腕にあります。
第一にそれまでのドレスシャツ、カジュアルシャツの中間にあるアッパーカジュアル(Upper Casual)というカテゴリーにいち早く注目して商品開発に取り組んで来たことです。第二にマーケティングを重視して、オリアンさん自身が世界や日本を飛び回って集めた現場のニーズをサイズなど細かく商品に反映したことです。
そんなオリアンさんの典型的なアッパーカジュアルが、トップ画像にあるThe GiGiのネイビーカシミアフランネル ダブルブレストブレザーのスタイルです。アンコンストラクテッド、3パッチポケット、8ボタンのすぐ脇に入ったダーツは古い英国の船員の制服に見られるクラシックなディテールなのです。
お得意のシャツはOrian Fluid Evolutionのコットンジャージ素材のジオメトリックパターン。この幾何学模様やジャージ素材をいち早く採用したのもORIAN社でした。Sette fili社のグレーのカシミアニットタイを合わせてVゾーンを落ち着かせているのも上手いですね。
ボトムスはPT01のグレーのウールジャカード素材カモフラージュパンツです。全身を上質素材のネイビーとグレーの2色に絞り込んだことで生まれる大人のアッパーカジュアルが実に見事です。
スーツはRalph Lauren Purple Labelのものです。数ある英国伝統柄の中でも最も格式の高いのが、ロンドン、シティの銀行家達に長年愛用されてきたこのバンカーストライプです。ネイビーのウーステッド素材に1インチ幅で打ち込まれた白のストライプを良くみるとドット状になっているのが分かると思います。このストライプの部分だけ白の綿糸を使うのが英国ハダースフィールドの老舗素材メーカーの伝統なのです。
クラシックなスーツにOrian Vintageのペイズリープリントシャツを合わせるあたりは、さすがシャツメーカーの社長ならではのコーディネートです。ホワイトとネイビーで構成されたペイズリーをFiorioのネイビーシルクタイでぐっと引き締めています。
時計はRolex Oyster Air King 1990です。小振りの口径とネイビーブルーの文字盤がとてもお気に入りだそうです。眼鏡フレームやポケットチーフなども含めて全身でネイビーとホワイトの2色しか使用していないのでとても統一感があるのです。
細身のトラウザースに合わせているのはAndrea Venturaのラバーソールでボリュームのあるストレートチップです。丸みのあるキャップトゥ、外羽根式のデザイン、パーフォメーションなどが黒靴でありながら堅苦しい印象を与えません。
5アイレットですが4つしか結ばないのも着崩しのテクニックです。両者を結ぶソックスはネイビーウールリブのホーズです。細身のパンツとボリューム感のあるシューズのバランスはFORZA STYLEの提案に通じるものがありますね。
フェデリコ・オリアンさんの見事な着こなしは英国にルーツを持つ紳士服の基本をベースに、イタリアならではの感性、トレンド、時代感の取り入れ方の重要性を我々に教えてくれるに教えてくれるのです。
Text:Carlo Kurobe

カルロ黒部(黒部和夫)
カルロ インターナショナル代表 ファッションコンサルタント ファッション評論家。1958年外交官子弟として駐 インドネシア日本大使館で誕生。1983年オンワード樫山入社後、メンズ企画部門を歩む。2014年同社退職後、カルロ インターナショナル設立。国内外のファッション企業のコンサルティングおよびPR業をはじめ、ファッション評論や公演で活躍中。