ハンバーガーメニューボタン
FORZA STYLE - 粋なダンナのLuxuaryWebMagazine
LIFESTYLE そこが知りたい! 暮らしの真相

「もうシェフ、辞めようかな…」あのラウンジ嬢だけじゃない。都内有名シェフを日夜悩ませる「急増迷惑客との距離感」

無料会員をしていただくと、
記事をクリップできます

新規会員登録
「あの声で とかげをくらうか ほととぎす」 この世の森羅万象のウラ側を、FORZA STYLEの取材班が徹底取材。あなたの暮らしを守る、独自レポート。

「食べに来るというより、撮りに来ている」

南麻布の高級寿司店で起きたあるトラブルが、X(旧Twitter)で物議を醸してたことは記憶に新しい。危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう話す。

トラブルの原因のひとつとされているのが、店内での撮影についてだ。

「実は発信こそされませんが、このようなトラブルを最近よく耳にします。というのも食事を楽しむべきレストランで撮影ばかりしている人が多いというのです。私のところへ相談にくるシェフも後を絶ちません」。

今回は都内で有名イタリア料理店を営むある男性に話を聞くことができた。

………………………………………………

Yahoo! 配信用パラグラフ分割
©︎GettyImages

玉山涼太さん(仮名・46歳)は、最近のレストラン事情を憂う1人だ。夫婦2人とバイトで店を運営している。

「ここ数年、客層がガラリと変わった印象です。食べるのが好きというよりは、写真を撮るために来る、そんな人も多いと感じます。正直いえば、残念な気持ちもあります。食材は命です。シェフの仕事は、その命を誰かの命につなげる仕事です。そういう想いが伝わらない歯痒さを感じて、悶々とする日々です」。

確かに料理を食べる前に写真を撮影する光景は、今や日常になった。15年前にはまだなかった日常に思える。

「そうですね。15年くらい前はSNSがここまで発展していなかったので、熱心に撮影をするのはよほどの食通か、食べログに掲載する人くらいでした。ところが今では、食べる前に写真を撮らない人の方が珍しく感じるほどです。特に若い世代は、ほぼほぼカメラを向けますね」。

数年前であれば、ひとこと「写真撮ってもいいですか?」と声を掛けられることもあったが、当たり前のように撮影が始まることも少なくない。

「いや、写真を撮ること自体を否定したいわけではないんです。これもひとつの文化でしょうから。ただ、私たちはベストな瞬間に料理を提供しています。だから、その瞬間を逃してほしくない…そういう思いがあるんです。ただ、うちはいわゆる超高級店でもありませんし、マナーはまだしもルールを敷くことはなかなかできない。なかなか難しいところです」。

飲食店のなかには、ホームページやSNSに来店のルールを記載するところも増えている。事前に客と店のスタンスとのミスマッチを防ぐためである。

よく知られているのは、ドレスコードだ。ジャケット着用やサンダルや短パンをNGとするなど、誰もが耳にしたことがあるだろう。しかし、昨今ではより踏み込んだルールを提示する店も少なくない。

「知り合いの寿司店では、料理の邪魔になるということで香水をNGにしています。未就学児をNGとするお店も少なくありません。これまでこういったルールは格式のある店に許されるものという印象でしたが、コロナもあり、敷居が下がったように思います。私のお店でもルールを設けようか、妻と相談しているところです」。

涼太さんがルールを検討しているのには訳がある。先日、ある客とトラブルになってしまったというのだ。

「20代後半の男性客2人でした。こういうのあれですが、レストランでの食事経験が少ないんじゃないかな?そう思いましたね」。

涼太さんは彼らの立ち振る舞いをみてそう感じたらしい。

「ただ、お客様はお客様ですからいつも通り対応をしていたのですが…」。

飲み物のオーダーを取りに行き、戻った妻が怪訝な顔をしていたというのだ。

「オーダーはなし。無料の水でと言われたそうです、私の店はお酒を注文する人がほとんど。もちろんノンアルコールも用意しています。お水だけを飲む方は基本、有料のものを勧めます。というのもコースは基本、ワンドリンクはオーダーをいただけるようお願いしているんです」。

予約の際にこの迄は伝えてある。しかし、無料でと押し切ってきたというのだ。涼太さんはほかとの公平性が保てないことから、1本だけ有料の水をオーダーしてもらえるよう頭を下げたそう。

「ふてぶてしい態度でしたが、なんとかお水はオーダーしていただけました。ただ、なんというかやばい予感がしました」。

涼太さんが感じていた客への不信感が現実のものになる。1人がテーブルの上に、スマホスタンドを立て、何やら撮影し始めたというのだ。

「これにはびっくり。小さなお店なので、すべての席からその様子がみて取れます。テーブルに置かれたスマホは、おそらく動画用。手元にもそれぞれスマホを持っていて、そちらではナイフやフォークなど、テーブルセッティングやお互いを撮影していました」。

後編】では、さらに過激になる迷惑な客の行為について詳しく迫っていきたい。

取材・文/悠木 律



RANKING

1
2
3
4
5
1
2
3
4
5