数々のハラスメントの中でも相談件数の多い「セクハラ」。その被害者は女性だけではありません。セクハラ自体が男性が女性に対して起こすハラスメントというイメージが根強く、また被害を中々言い出すことが出来ない男性も多いため、表面化しづらいのが現状だそう。
危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏が言う。
「俗に言う逆セクハラに悩む男性は、とても多い。社会の理解が追いついていないことも、問題が隠れやすい原因のひとつです」
今回FORZA STYLEライフ取材班は、勤務先でセクハラ被害にあった男性に話を聞いた。
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セクハラ被害について話を聞いたのは、中国地方に住む佐々木優太さん(仮名・30歳)。24歳のときに新卒で地元の中小企業に入社し、経理事務の部署に配属されたそう。
「入社当初はやっと社会人になれた! 頑張るぞと胸を躍らせて入社しました。しかし、だんだん職場環境や人間関係に疑問を抱くようになったんです。入社3か月で月の残業時間が40時間を超えるようになりました」
そう語る彼は、新卒で入社した会社でどのような経験をしたのか。取材班は優太さんが経験したことについて詳しく話を聞いた。
大学2年生の時に休学して季節労働でお金を貯め、1年間カナダへ留学した。
「姉がワーキングホリデーに行っているのを見て、僕も留学してみたいと思ったのがきっかけで、思い切って大学2年間を休学したんです。卒業後は英語を使う仕事につきたいと思っていました」
日本に帰国して大学に復学し、24歳で卒業。就活は10社ほど受け、地元の企業へ入社した。
「地元で知名度が高い企業から内定を貰えたんです。英語に関する仕事ではなかったですが、両親も喜んでくれていたのを覚えてます。将来安泰だと思っていました」
同期は約50名。高卒・専門卒・大卒の年齢が異なる仲間たちと1か月の座学研修に励んだ。
「同期とは気が合い、研修はめちゃくちゃ楽しかったです。研修のときはどこに配属するかわからなかったので、みんなでワクワクしていましたね」
研修が終わり辞令が出て、新入社員たちは各支店へ配属された。優太さんが配属されたのは、県内忙しさナンバー1の支店で来客や業務が多かった。その支店の総務課へ配属されたのだ。総務課といっても経理や人事担当、庶務、なんでも担当する部署だった。
しかし優太さんの部署は人の入れ替わりが多く、過去に派遣やパートを雇ってもみんな長続きしなかったようだ。
「あとから聞いたんですけど、僕が座ってた席は『呪いの席』と言われてたみたいです。この席に座った人はもたないってジンクスがありました。なんでだろう? と疑問に思っていたんですが、すぐその理由が分かりましたよ……」
配属された部署には、総務歴10年の46歳のお局(Aさん)がいた。通常は3年で異動するのが、その女性だけはなぜか長年同じポジション。数字に強く、何でも知っている「スーパー経理」だったのだ。
このAさんが優太さんの教育係になり、業務内容やお客さん対応、各業者とのやりとり、電話対応を1からレクチャーしてくれたという。
しかし、だんだん隣の席のAさんに対し疑問を抱くようになったのだ。
県内1忙しい優太さんの支店は、業務量に対し社員の人数が少なかった。体調に徐々に変化が現れたのは、月の残業時間が80時間を超えた入社9か月目の12月頃だった。
「残業が続き、会社に行きたくないと思い始めてから体重が減っていきました……。最初は1か月に3キロくらいでした」
「入社半年が過ぎた頃、隣の席のAさんがグイグイ来るようになって。もともと部署内のLINEグループはあったんですが、ある日急に個人LINEが来たんです」
「『近くで飲んでいるからおいで。それか家で飲む?』とか『46歳ってイケる?笑』などのLINEが来るようになりました。仕事を教える立場の人だったので、最初は酔いLINEかなと思って簡単にあしらってたんですが......」
当時のことを思い出しながら不快そうに話す。
「ボディータッチも入社当初から激しめでした。トイレから帰ってきて濡れている手を僕のシャツに笑いながら拭いたり、腕を触られたり。香水の匂いもきついしパーソナルスペースにぐいぐい入ってくるし、仕事は忙しいし隣の席のお局はキツイし、限界が来ました」
☆次回ではスーパー経理からのセクハラに抗議した優太さんに降りかかったさらなる悲劇と、優太さんがとった【反撃】について詳細にレポートする☆。
ライター 錦城和佳