「教員の『働き方改革』として生成AIを利用してはどうかという提案があったことは事実です。ただ、人間が人間を育てるという現場に、AIを持ち込むこと自体に、私は反対です。そもそも、生徒の人生を決めるかもしれない推薦書を書く際に『生成AIをつかおう』と思いつくこと自体が信じられない」
丈一郎さんとは真逆の立場で考え込んでいるのは、恵理子さん(仮名)49歳だ。
「うちの職場にも、『生成AIで作った推薦書がコレなんですけど、やっぱ進んでますよねー、生成AI。俺が作るより絶対うまいっすよ』とかなんとか言いながら、得意げに生成AIを作る若手がいましたが、私は、苦言を呈しました。
自分の推薦書が上手くないと思うのであれば、先輩が以前書いたものなんかを見ながら勉強して努力すべきです。生成AIに作らせて得意げなんて、ありえない。
生徒のことを本当に心から思っていれば、どんなに大変でも、自分自身で推薦書は作るべきです」
恵理子さんの言葉に力がこもる。
「その教員はあろうことか、『志望理由書が書けない』と悩む生徒に生成AIを勧めるような真似をしたので、慌てて止めました。志望理由書というのは、本人がどれほどその大学に行きたいのかということを、大学に伝えるために書くものです。
形が整っていればいいということでもないし、キーワードが入っていればいいということでもない。生徒本人と教員が話をしながら、生徒本人がどんなことを望んでいるのかを引き出さなければならないし、望んでいることをどのように言葉にすれば、大学側が自分を入学させたいと思ってくれるのかを生徒に考えさせないといけません。それもまた、教育です」
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