「念のためだけど、私たち付き合ってるよね」「なんでそう思う？」自称モテモテの44歳が【本命にさえなれない問題】と向き合って見えた致命的死角。

多様性の時代になり、個人の意思が尊ばれる今日この頃。「結婚してもしなくてもいいですよ」という雰囲気が世の中を覆うほど、増えていくのは婚活という闘いに疲弊する紳士淑女たち。“人並み”の相場が暴騰し、混迷かつ複雑を極める“結婚というゴール”への最短距離を示すは、道場主・川崎貴子。

今回、道場にかけ込んできたのは、海外生活が長い超魅力的な女性。セクシーでパワフル、仕事もでき、プライベートも充実しています。性格も明るく前向きで、気風がよくサバサバしている。全方位的なイイ女だから、彼女を慕う人がたくさんいるのに、恋愛がうまくいかない。「結婚どころか彼女にさえなれないです」と婚活道場にかけ込んできた。多くの女性が悩む「本命彼女の席に座れない問題」について、川崎貴子が物申す。

今回の相談者は、沙織さん（44歳）。

沙織さんのスペックはこちら！
年齢：44歳
職業：外資系ホテル運営会社勤務
恋人：なし
交際人数：10人
結婚暦：あり
結婚願望：したい！
顔：マンガ『シティハンター』に出てきそうなグラマラスな美女

川崎：ねえ、ハイスペックと言われる男性たちに、めちゃめちゃモテるでしょ？

沙織：なんでわかるんですか!?　自分で言うのもなんですが、けっこうモテます。

川崎：あなたのように、明るくてさっぱりしていて、幸せそうな美人にハイスぺは本能的に惹かれてしまうのよ。

沙織：本能的……なんかわかる。私、溜池山王とか霞が関近辺あたりで、めっちゃナンパされます。

川崎：外資系企業のオフィスが乱立しているエリアってことは、あなたは外国人モテするってことよね？　わかるわー（笑）

沙織：はい。ヨーロッパの北の方の人が多いかも。イギリス、ドイツ、スイス、オランダあたりかな。フランスとかイタリアの男性は交際歴がありません。日本人男性とも付き合ったことがありますが、海外暮らしが長い人ばかりだったな。

川崎：そっか、幼さとか若さを重視する恋愛観とは真逆にいるもんね。いったい、これまでどんな恋愛をしてきたの？　話したくないことは言わないでいいからね。

沙織：ちょっとバリエーションが豊富なので、最初からいいます。発端は小学校6年生の時。私は都内の公立小学校に通っていたのですが、そこに日独ハーフの男の子が転校してきたんです。その子が初恋の人なんですけど、高校時代に渋谷のクラブで再会し大学生まで付き合いました。

川崎：クラブ？

沙織：つっても、いわゆる“音箱”という、ナンパが目的ではない箱ですよ。私、テクノ系が好きなんです。その子とは結構本気で付き合っていたのに、自然消滅。工学系の学部に通っていたのですが、猛勉強して大手建設会社に入社。東南アジアのある国の建築プロジェクトチームに入って現地に行きました。

川崎：すごいキャリア。でも建設関係ってめちゃくちゃ男社会じゃない。

沙織：当時、海外プロジェクトが多く、私は専門知識があり、さらに英語がほぼネイティブなので、通訳も兼ねての採用だったんですよ。それで現地で2～3年働いていたんですが、けっこうヤバい接待の場面に同席することが多く、それが私の信条に反することもあり、辞めたんです。

川崎：それは…ありそうで震えるわ。迎合しなくて正解よ。普通、流されちゃうところだよね。

沙織：あ～、そうかもしれませんね。私、おじいちゃんがクリスチャンで、戦前の思想弾圧に負けず投獄もされた人で、めっちゃ尊敬しているんです。だから、筋を通して生きたいし、そういう人になりたいと思ったんです。

川崎：筋か。なるほどね。そうなると、会社の文化や社会の風潮に合わせて、思考停止してしまう男性とは付き合えないってことになるか。

沙織：まさにそうです。建設会社時代、政府の人や会社の人といい感じになったことがあったんですが、プライベートの時はいいんですけど、仕事になるとのっぺらぼうみたいに見える瞬間があって、「ないわ～」って。

川崎：そうよね。組織に盲従しないと会社員ができないような文化が昔はあったから。それで、会社を辞めてどうしたの？

沙織：一度、実家に帰って、ワーキングホリデーでオーストラリアに行ったんです。ワインが好きだから、ワイナリーで働きながら、トレッキングに目覚めてしまった。

山岳ガイドのバイトもしつつ、現地の日系企業に採用されて、オーストラリアと日本の往復生活をして20年。この間に、たくさんの男性と付き合いました。日本人男性と一時期結婚し、離婚も経験したんです。その後も、いろんな人と交際しましたが、いつも浮気されて関係が終了。

川崎：それは辛かったね。自分の隣にいるパートナーに裏切られると、精神的なダメージが大きい。

沙織：ちょっとした浮気ならいいんですよ。私は1～2回の浮気は許します。だれだって魔が差すことがあると思うんです。そこで目くじら立てたくない。それは相手にも伝えています。

川崎：（大きな声で）それだ！

沙織：（ポカーンとした表情で無言になる）

川崎：それよ。それがダメなの。これはケースバイケースだけど、“浮気、ダメ絶対”が基本。だって、交際するってことはお互いに対等な立場で向き合い、信じ合うことだからさ。

「ちょっとした浮気ならいい」なんて思うだけでなく、相手にまで伝えてしまったら、特にあなたがターゲットにしてるような男性達は浮気するわよ。

沙織：え？　だって、「たまには外食したい」とか思うし、それを尊重したいって言うか……

川崎：じゃ、聞くけどあなたは交際している相手から、「沙織はモテるから、ちょっとした浮気ならいい」って思われたらどう思う？

沙織：……悲しい。大切にされていないと感じるし、軽く見られているみたいで、悲しいです。

川崎：それよ。男と女は違うとか、浮気は男の甲斐性だとか、いろんな言説はあるけれど、浮気前提はダメなのよ。あとさ、あなた、長女でしょ。

沙織：なんでわかるんですか？　弟と妹がいる長女です。

川崎：あなたの、浮気への寛容なポーズや、他人への「要らぬ配慮」は「長女あるある」。道場に来ても、あなたがお客様なのに、皆のコップにお茶を入れたり、私たちに何らかの有益な情報を与えようとさまざまな海外情報を盛り込んできたり、私だけでなくスタッフ全体の空気に配慮したり……これ、私も長女だから、わかるんだけどね。

まあ、あなたは、期待に応えようと努力を惜しまない傾向があり、しっかり者として生きてていることは伝わる。それに、世話焼きっぷりも際立っているし、自由に生きているように見せているけれど相手を優先しているし、人に頼ることが苦手なのに、サービス精神旺盛で、美しくて気さくで優しい。それに……

沙織：もうそのくらいにしてください！　泣きそうです。

川崎：私はほめていたのよ！　それに、泣きたいなら泣いてもいい。ここは何をしてもいい自由な空間だから。

沙織：ううう……今、毛穴という毛穴から、これまで私が飲み込んできた「なんだかな～」って思いが流れ出ていってるのがわかります。

それに、私が最初の会社を辞めたのは、飲み込めるものが飽和状態になったからなんです。

川崎：そこで辞めたのは本当にえらいし、よく頑張ったよ。それにあなたはチャレンジに躊躇がない。そこも素晴らしいね。長女の特徴のひとつに、嫌な人間関係から抜けると、自由にふるまえるっていうのがあるからさ。

沙織：はい。私が海外で生活しているのもそれが大きいです。親は私を応援してくれるし、弟妹に子供が生まれてからは、結婚への期待もなくなったし「海外で頑張るカッコいい姉」ポジションを確立し、楽しく生きています。

川崎：うん。そうね。そして、あなたは聞き分けがよさすぎる傾向があるとも思う。例えば相手に「私たち、付き合っているんだよね」と確認したことある？　あと交際相手の家に、あなたの歯ブラシや基礎化粧品、パジャマなどを置いたことがある？

沙織：私、そういうこと一切したことないんです。最近、3年間付き合った人に勇気を振り絞って「私たち、恋人同士だよね」って聞いたんです。そしたら相手から、「なんでそう思うの？　僕たちはステディな関係にはなっていないよね」というニュアンスで……

川崎：は？　3年間も付き合っていたんでしょ？

＜ハイスペック男性からモテるのに、なかなか本命として見られない沙織さん。川崎貴子が彼女に見出した、ある問題点とは——？　後編に続く。＞