子供をダシにすればわがままが通ると思っている妻に、達樹さんは腹が立った。
「自分が行きたいとか、ママ友に対して引っ込みがつかないとか本音を言えばいいのに、言わないから余計頭に来る。言ったとしても俺は反対してましたけどね。
そもそも、子供同士はさほど親密でもなさそうですし、そうまでして庶民がそんなゴージャス旅行に行くの、おかしいでしょ」
話が進むうち、達樹さんの本音が顔を出す。
「妻が自分で稼いでいるなら文句は言いません。彼女が旅行代金として使うのは、俺とスタッフが必死で頑張った稼ぎですよ。妻には私生活でサポートしてもらってるかもしれないけど、最近は足引っ張られてる感の方が全然強い。
まだ軌道に乗ったとは言えない店の運営をみんなで頑張っていることを知りながら、贅沢や見栄のために身の丈に合わない遊びをするなんて、俺、みんなに示しがつきません」
しかし、日頃ほとんど遊びにつき合ってやれないことが後ろめたい達樹さんは、泊まっても良いがホテルや部屋のグレードはできるだけ安価なものにするよう、妻に念を押して旅行を許可した。
「妻は許しを得て小躍りしていました。ですが、約束なんて最初から守るつもりはなかったんでしょうね。最初言ってた7〜8万ていうのも多分ウソ。実際の旅費は、俺が想定していた倍以上だったんです」
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