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LIFESTYLE 女たちの事件簿

【男の日焼け止め問題】意識高い高校生の息子にマッチョ思想で詰め寄る50代夫。家族から孤立した「もっともな理由」

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不倫や浮気、DVにプチ風俗……。妻として、母として、ひとりの女性として社会生活を営み、穏やかに微笑んでいる彼女たちが密かに抱えている秘密とは? 夫やパートナーはもちろん、ごく近しい知人のみしか知らない、女たちの「裏の顔」をリサーチ。ほら、いまあなたの隣にいる女性も、もしかしたら……。

夏の甲子園が今年も熱かった。次々と強敵を破り、勝ち上がった慶應義塾高校には大きな関心が寄せられた。さらに試合だけでなく、あるものにも熱視線が! そのひとつが髪型である。甲子園、野球とくれば、やはり坊主を想像してしまう人も少なくないだろう。しかし、慶應義塾高校の野球部員たちのヘアスタイルは、短髪にツーブロックとおしゃれな雰囲気。高校野球=坊主というステレオタイプの先入観をぶち壊してくれたのだ。

さらに慶應義塾高校野球部のリードオフマンでもある丸田選手は、チームを牽引する外野手だが、彼はハンカチ王子ならぬ。美白王子として注目を集める存在だ。日焼け止めは欠かさないという。

男性が見た目や美容に気を使うのは、もはや当たり前なのだ。

危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう述べる。

「株式会社リクルートの調査によると男性向け美容サロン市場が大幅に拡大しているそうです。これはジェンダーにかかわることなく、美容意識が上がっていることの裏付けとも言えます。美容もまたジェンダーレスになりつつあるということでしょう」。

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そんな当たり前になりつつあるメンズ美容にハマっている息子を持つのが、板橋久美子さん(仮名・48歳)。夫と息子と暮らすワーママだ。大学生の娘は上京して、一人暮らしをしている。

「今でこそ保育園の送り迎えをしているお父さんをよく見かけますが、うちの子どもたちが小さかった頃は、そのほとんどがお母さん。それが普通というか、当たり前というか…。年子なので正直めちゃくちゃでしたけど、保育園の先生やご近所の方、それからママ友に助けられ、なんとかここまで大きくなったという感じです」。

にこやかに笑う久美子さんだが、最近夫と子どもたちの関係に悩んでいるという。

「夫は今年50歳になりました。多くの部下がいる部長職ですが、苦労も多いようで最近はめっきり元気がありません。早期退職して田舎で親孝行しようかななんて話すくらい気落ちしている日もあるほど。有名企業というほどではありませんが、地元ではそこそこ名のしれた企業に勤めていて、子どもたちが小さい頃は単身赴任もあったりで一緒に過ごす時間はかなり短かったと思います。今になって、少し時間に余裕ができて、子どもたちとの時間を大切にしたいと思っているみたいですが、お話しした通り、彼らは高校生と大学生。親と過ごす暇があるなら、友達と遊びたいと思う青春真っ只中です」。

確かに高校生や大学生にもなって急に親から距離を詰められたところで、困ってしまう子どもたちの気持ちもわからないではない。特に一緒に暮らす息子との間はピリついているらしい。

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「息子は高校2年生なんですが、去年の暮れ頃から、すごく美容に凝るようになりました。今や、私より高い化粧品を使っています。バイトで貯めたお金でいろいろとやっている感じなので私も特に何も言いません。それにね、みるみる変わっていくんです、肌質とか髪質とか。今は私のほうがいろいろと教えてもらっています」。

タオルで顔を拭かない、洗顔後は即パック、飲み物はなるべく温かいもの…これは、久美子さんが息子から教わって実践をしていることの一部だ。

「息子は美容にまつわる知識をYouTubeやTikTok、Instagramなんかで調べているみたいです。今の時代は、やりたいと思ったことをすぐに調べることができるツールがあっていいなと思います」。

理解のある母と息子が、共通の趣味を楽しんでいる。一見、幸せそうな絵面だが夫はその姿を疎ましく思っているらしい。

「男が美容なんて気持ち悪いっていうんですよ。私も夫と同世代なので、言っていることがまるでわからないわけじゃないんです。昔はなんでも男はこう、女はこうと決められていた節がありましたから。でも、時代は変わっています。男だからとか、女だからとか、そういうのはもはや禁句ですよね」。

しかし、夫はどうしても気に入らないようで、何かにつけて息子にデリカシーのない発言を繰り返すらしい。

「息子が眉毛を整えているのを見て、お前は女かと言ったり、スチーマーを使っているのをみて、サウナ行け、サウナと言ったり…。見ていてあまりにも不快で何度か夫にも言ったんですけど、聞く耳ゼロ。何より、イタイのは自分が正しいと思い込んでいて、まるで周りが見えていないこと。俺の時代は…と話を始めるたび、息子はもはや軽蔑の目を向けています」。

息子は夫が早く帰宅する日は、遅くに帰宅するようになっていったという。

「LINEで夫の帰宅予定を聞いてきます。鉢合わせしないようにしているんだと思います。帰ってきても何か言われるのが面倒だからすぐに部屋に入ってしまいます。一緒に夕食をとることも避けるように、最近は平日は毎晩バイトを入れています」。

ここまで言われても息子が夫に歯向かうことはまだないらしい。

「手前味噌ですが、根がすごく優しい子なんです。だからこれまで育ててくれた感謝みたいなものがあるからこそ、黙っているんじゃないかな。でも、もっと気になることがあったんです。

夏休み前に三者面談がありました。息子の担任の先生は、50代半ばのベテランで、会話のメインは来年の受験について。ところが最後になって、私だけ教室に残されたんです」。

©︎GettyImages

そして、こう言われたんだという。

ー息子さん、もしかしてジェンダーに問題があるのでは?

久美子さんは一瞬、何を言われているのか分からなかった。

「ちょっと考えてやっと理解ができました。眉毛を整えたり、ファンデーションをぬったり…美容は女性だけがすることだと思っているんですね。息子がトランスジェンダーなのでは?と言いたかったんだと思います」。

久美子さんは「今は男性の美容も当たり前ですよ」と言うことしかできなかった。

耐えている息子とは対照的にまるで理解を示さない夫。そんな関係性にある日、大きな亀裂が入るる。【後編】ではそのきっかけになったある出来事の詳細を聞いていこう。

取材・文/悠木 律



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