先週末、マスメディアにも寄稿する「著名なネット論客」が、
「『マイナ保険証』を使いたくない理由として『医者や看護師に病歴や投薬歴を知られたくない』という人は多いです。」
という、根拠も意味もよく分からない主張をTwitter(X)に展開し、ネット上で笑われておりました。
病院からすれば、そんな医療事故直結の当たり屋みたいな患者には来て欲しくないし、正直「学校の担任に自分の成績を知られたくない」とゴネる子供くらいワケのわからない主張なので、まあ笑うでしょう。
真面目に言えば、病歴や投薬歴は生死にかかわる重要な情報であり、医師にしっかり伝えるべきもの。ただでさえ新型コロナで医療機関はバタついています。余計な医療事故は起こさないで欲しいし、また本当に医療事故に繋がれば、その治療費の大半は税金です。
こういった著名アカウントの発信を真に受け、「保険証」を主な身分証明にしている方がマイナンバーカードを返納、後日、携帯ショップで、
「保険証は身分証明に使えませんよ(※)」
と断られて愕然とする姿とか……ホント気の毒なので、周囲は止めてあげて欲しいです。結局はマイナンバーカードを再発行する羽目になり、その余計な事務作業費もやっぱり税金になります。
(※携帯3キャリアは保険証による本人確認を終了しています)
ちなみにマイナ保険証導入の背景には「保険証の不正利用(他人への貸与)」を防ぐ目的もあるのですが、別の著名アカウントが「保険証の貸し借りで損をする人はいない」というナゾ理論を展開、えっ、それって違法行為ですよね、としか突っ込めない事態にネットが騒然となりました。
説明するのもアレですが、保険料を負担していない人たちによる「他人の保険証で受診」が横行すれば、ちゃんと負担している人たちの保険料が無駄に増加するし、あと何度も言うけどそれ違法だから。
やがてタイムリミットが……
とにかくこの界隈は、どこから突っ込んだら良いのか分からない主張で渋滞気味で、さすがに「マイナンバーカード憎し」「マイナ保険証憎し」をこじらせすぎでは、とちょっと心配になります。
元をたどれば、マイナンバーにまつわる複数のトラブルがバッシングの起点だと言えますが、いずれも作業ミスやシステム負荷によるものであり、更にはユーザー側の誤り(子のマイナンバーに親の口座を登録とか)などもあって、ちゃんとやれよ、と運用ルールを見直せば済む話です。いずれも本質的な問題ではありません。
また全体から見ても、これらのミスが発生している頻度は非常に低く、私たちが明日クルマにひかれる可能性の方が遥かに高い、というのが事実です。更に言えば、マイナンバーとマイナンバーカードは別モノであり、マイナンバーは全国民に発番済なので、カードを返納しようが悲しいくらい何も変わりません。
マイナンバーは「いろんな情報をのぞき見できる」システムではなく、そういう仕組みもなく、拾われたところで悪用する手段はほぼ無く、そう言った意味では「顔写真のない保険証」の方が遥かに危険なのです。
同様に、財布に入れて持ち歩いているクレカや免許証だって、マイナンバーカードとは比べ物にならないほど高リスクなので、「マイナカード怖い」という方は、先に今すぐそれらを返上すべきでは、という話でしかありません。
マイナンバーカードは既に国民の7割に普及しています。さらに普及率を上げ、効率化・コスト削減を進めなければ、行政は早晩回らなくなる。悲しいかな、日本には「マイナカードは嫌」みたいな根拠のないお気持ちに付き合っている余裕は……もうないのです。
Text:小木曽健(国際大学GLOCOM客員研究員)
※本記事のタイトルはFORZA STYLE編集部によるものです。