麻衣子さんは、高校生たちの話を聞けば聞くほどに、自分にとっては位置情報共有アプリがストレスにしかならないだろうと感じるそうだが、「今の子どもたち」は、そんなストレスよりも「つながっていること」にメリットを感じているのだろうと考えるようになった。
「そもそも彼らは位置情報共有アプリを使う前から、Twitterで自分の行動について実況したり、インスタグラムのストーリーズでリアルタイム配信をしたりなど、位置情報の共有に大した抵抗がないのかもしれません。
ある保護者の方は娘さんから『ママもZenly使ってよ。』と言われたそうです。理由を聞くと、『どこにいるの?って毎回毎回メールされて、いちいちそれに返事するのが面倒だからアプリ見てくれないかなーと思って。』と言われたと呆れていました。そして、呆れよりもそんなアプリがあって、それを自分の娘が使っていることに不安を覚えたと仰っていました。」
確かに、大人世代は高校生たちが自分のプライバシーを自ら公開している状況に不安を覚える。
Zenlyにはプライバシー設定があり、「プライベートモード」をオンにすると、登録している相手以外からの申請をブロックすることができるそうだ。
「だから、危なくないよ。」と子どもたちは言うが、そこに気付かずにデフォルト設定のままにしていると、全てのZenlyユーザーがメッセージを送る権利を持つことになる。友達からZenlyの存在を聞いて安易にダウンロードし、そういった設定を全く知らず、知らない人からどんどんメッセージが来る上に「知り合いかもしれないユーザー」などがどんどん出てきて怖くなった経験を持つ子どももいる、と麻衣子さんは語る。
「Zenlyには『Bump』という機能があって、わざわざID交換などをしなくても、アプリを起動してスマホを振るだけで『友達』になってしまうのですって。いたずらでZenlyを使っていそうな人の側でZenlyを開いてスマホを振り、無差別に友達を増やすという遊びが流行ったこともあったそうですよ。」
麻衣子さんは苦笑いしている。
「まあ、Zenlyはもうサービスを終了するそうですから、他の位置情報共有アプリにどんな機能があるかですよね。代わりのアプリとして『ココダヨ』とか『ココイル』とか『iシェアリング』などが良いかもと言われているそうですけど、基本的には家族同士が位置情報を共有するためのアプリなので『Zenlyが良かったなー。』なんて子どもたちはよく話しています。『NauNau』っていうものもあるらしいですよ。」
そしてそう話す彼女の元には、位置情報共有アプリが原因で起こるもめ事がいくつか持ち込まれているのだった(ライター 八幡那由多)