60台以上を乗って売ってわかった「本当に査定の良いクルマ」とは?
えっ? と思われるかもしれませんが、新車を買って3年間に100万円得するのはそう難しいことではありません。
計算方法は簡単。『新車価格-買取りor下取り価格=消費金額』ですから単純明快。この『買取りor下取り』部分を大きくすればいいのです。
『買取りor下取り』というより、むしろ『売値』といった方がご理解いただけるでしょうか。
クルマを買う時のアナタは消費者ですが、何年か経過し、クルマを手放すタイミングではこの立場が逆転します。今日の買い手は明日の売り手。少しでも高く売ることができれば消費金額を抑えられます。
例えばeBayなど、オークションサイトに出品することをイメージしてみてください。誰もが欲しいと思う商品や、希少価値の高い商品ほど仕入れ値と売値の差額が生まれ利益が大きくなります。
クルマは基本的に登録された瞬間から価格は下がりますので、「お金儲け」にはなりませんが、『クルマをリセールする数年後を見越したクルマ選び』ができれば、リセールバリューが高まり、サイフにゆとりが生まれます。また、同じ月額予算でも上級モデルが狙えます。
要は「賢くお得に車を乗り換えていける」ワケです。
ココに自称、日本一、トヨタとBMWを個人として買い換えてきた男がいます。
その名はマッド平塚こと、平塚俊樹氏。カー用品メーカー最大手に10数年勤務し、職務上、自動車メーカーと交流し様々なノウハウを取得。現在は危機管理コンサルタントとテレビや雑誌で活躍中の人物。大手自動車メーカーの開発アドバイスも行う、知る人ぞ知る在野の有力者です。
車両1台当たりの平均所有期間は約2年。新車を買って2年経ったら売って、また別の新車を買う。そんな新車転がしを数限りなく重ねてきた、その実例を根掘り葉掘り聞きつつ、最新の人気動向とトクする新車の購入術を紐解いていきます。
それでは、ゆる~くトーク開始!
――マッドさん、ご無沙汰です。相変わらず恰幅いいっすね。美味しいモノ食べているんでしょ。
マッド平塚(以下、M) その言葉そっくり返します。でも、美味しいモノは大好き!
――ところで。いままで何台乗ってきたんですか?
M 先に連絡もらっていたから数えてみたんですけど、軽く60台は超えているんじゃないかな。ちょっと書き出してみますね。
――疑問なんですけど、なんでそんなに乗り換えるの? 2年って早くないですか?
M 危機管理コンサルタントという職業柄、国内外のVIPの送迎にクルマを使うのですが、いつも同じクルマだと安全が保てないんです。
活動範囲の関東近郊の複数の駅に駐車場を借りていて、そこにいろいろなクルマを置いていて、目的や目的地に応じて乗り換えているんですよ。
子供の頃から車が大好きだったってのも、もちろん大きいですが(笑)。
――なるほど〜。かなり特殊なお仕事ですが、おかげでクルマがドンドン増えていったんですね。現在の所有数は?
M スタッフ分もあるけど、最低10台を下回ることはないです。コンパクトカー、SUV、スポーツカーまで、そのほとんどはトヨタとBMWですけど。
――で、本題に入りますけど、一番下取り価格が安かったクルマは?
M トヨタiQですね。グレードは『130G レザーパッケージ プラス』で車両価格が税込173万円。コレにオプションと付属品、諸費用にローン手数料を加えて350万円になりました。一か月後、試しに「いま売ったらいくら?」って聞いたら80万円でした(笑)。
全長3mに満たないマイクロカーとして注目されたiQを2009年に購入。しかし、下取り査定額は……
――それはショックですね。いきなり4分の1以下に落っこちるとは。
M そんなに安いのならしばらく乗るかってことで、結局iQだけ5年乗ったんですけど、その5年後の下取り査定額が80万円と同じ金額でした(笑)。まあ大損ではないですけどね。
――微妙ですね。総額で計算すると……残価率23%と出ました。リセールバリュー良くなかったですね。ディーラーでも税抜き車両本体価格+オプション価格でも5年後30%は欲しいところだけど、買取り専門店の方が高く売れたかもしれないですね。
M そうなんですよね。でも、この失敗で少し賢くなった(笑)。
――逆パターンで高く売れたクルマって何ですか?
M 最近だと、BMWの『X1 xDrive18d xLine』ですね。車両価格がオプション込みで560万円。2年8カ月で走行距離が約8000キロ。そして下取り査定額が430万円。大満足で『X2 xDrive20d』に乗り換えました。
――売るタイミングもよかったですかね。
X2の2リッター直4ディーゼル搭載車は追加モデルで2020年6月20日の販売開始。数が見込めるモデルだから売る方も気合いが違います。
下取りに放出したX1は一世代前のモデルだけど、走行距離も少ないし高値が付いたのかも。3年近く乗って残価率77%なんて通常あり得ない。32ヵ月乗ったので1ヵ月当たり4万円強ですか。
M このX1ってATが日本のアイシンで信頼性が高くなったことで人気あるんですって。
BMWのディーゼル車はガソリン車並みに走りもいいし、外車アレルギーだった人には安心感をもたらしたようですね。
――ところで、支払いプランはどんな感じですか?
M うちは法人だから、月額均等払いの支払いパターン。BMWって個別にフィナンシャルプランを組んでくれるから使いやすいんです。年間走行距離は不確実だから条件付きの残価設定ローンは組みません。それに、大体2年ごとに買い替えますからね。
――フツウは初回車検の3年、さらに2年後の5年がローン期間としては多いパターン。近年は残価設定型プランが多いですよね。
M 気をつけなければいけないのは、残価設定型ローンには2種類あって、下取り価格保証型(条件設定あり)と保証ナシのプランがあること。
残価設定できる金額や金利もそれぞれ違うことがあるから、年間走行距離など制約条件をよく聞いて損得勘定しないといけません。
――確かBMWって、保証型だと年間走行距離9000キロ以内だったかな。また、四半期ごとに残価設定率の見直しがあるから、いずれにせよ相見積もりを取って、総支払額も確認しないとですね。ところで法人なのにリースにしないのはなぜですか?
M リースだと契約期間が設けられるからウチの仕事に合わない。それに車両代とリース料で消費税の2重払いになる。気分的にもスッキリしないです。
――ごもっとも。個人的には査定っていうと、相手から上から目線で見られるようで嫌いなんですよね。今度はコッチが売り手なんだから、価格交渉って気持ちで挑みたい。
ところで、2年後に高く売れるクルマ選びって難しくないですか?
M まずBMWに限らず輸入車の場合、ディーラーは買取り義務があるんです。いわばメーカーとの契約上のノルマですね。
だから、のほほ~んと行くと、さばきたい(売りづらい)車種から進められてしまう。こればかりは付き合いの期間も大切だけど、遠慮せずに聞かないとダメですね。
――予備知識として避けた方がいい車種ってありますか?
M 総じて言えるのはPHEVやBEVは下取り査定が安いってこと。バッテリーがドンドン劣化していくから結局、安値査定で高い買い物についてしまいます。
いまオススメできるのはディーゼルエンジン搭載のSUVですかね。無論、車種にもよりますけど。
――保証型で3年50%以上の残価率が目安だと思います。人気車なら3年後に半額以下ってことにならないし、ディーラーの下取りより専門店に売った方が高値だった事例がいくつもあります。
M でも意外なことに、売れているクルマの下取り査定額が高いとは限らないんですよ。同じSUVでもライズとヤリスクロスを比較すれば断然後者の方がいいとセールスマンが教えてくれました。ただし、ライズでも4WDなら高く査定できるって。
――実用車のライズとスタイリッシュなヤリスクロスでは勝負になりませんな。で、最近MADさんは何買ったのかな?
M キャラじゃないけど、ハリアーです(笑)。
高額査定のイチオシはSUVのトヨタ・ハリアー
――グレードは何ですか?
M 『Z Leather Package ハイブリッド E-Four』ですね。
――さすがお目が高い。中古車で狙う人は上級グレードが欲しいですからね。プレミアムSUVならレザーシートは必須装備ですよ。ん? 一番高い奴じゃないんですか。車両本体価格だけでも504万円。これは2年後の査定が楽しみですね~。
M 私的にはクラウンが欲しかったんですけど、昵懇のセールスマンが売ってくれなかったんですよ。「高額で査定できないから」って。
――むきゅ! 許せないセールスマンですね。日本でオジサンになったら一度はクラウンに乗るべきなんですよ。ラクチンだし車格あるし。トヨタブランドのフラッグシップですよ。
そういえばクラウンの販売数が低迷しているってニュースになっていたけど、売る人が売らないんじゃ売れないですよね。次回はセダン市場も検証しましょうか。
M セールスマンの立場からすると、ドンドン乗り換えて欲しいワケで、3年以内に乗り換えてくれるお客様は神様なんですよ、新車が循環するから。
だから査定の安いクルマ(グレードを含む)は薦めないし損させない。自分たちの首を絞めてしまうわけだから。
――極端かもしれないけど、同じ1000万円のクルマでも、3年後の残価率が50%なら500万円。40%なら400万円でしょ。その差100万円ですよ。500万円のクルマなら、3年間で50万円の差が付く。その査定の高いクルマを乗り継ぐノウハウが見に付けば、ワンランク格上の高級車を新車で乗り継いでいくこともできると。
――それではマッド平塚さんの、新型ハリアーを見せてもらいましょう。なんとフルオプションのE-Four、いまだと納期1年待ちの大人気車種だとか。
M ノリさん、乗り心地はどうですか? 街中だと7割はBEVじゃないかと思えるほどエンジンを使わない。
トヨタってここ2~3年でハイブリッド車のクオリティがすっごく、高くなっていると実感するんですよね。
――こりゃあクラウンよりしっとりしていていいですね。ムスメ受けもハリアーだな。だけど……なんだか車内のクルマの匂いが変わった気がしますねぇ、トヨタ。
次回は平塚氏が「カムリ」を激推しする理由に迫ります。
乞うご期待!
Text:Seiichi Norishige