グイドボージの推薦とあって、絶対に捨てられません…
洋品、車、ワインで、それぞれ家一軒分ほど散財するという趣味が高じて、2019年東京・人形町にヴィンテージショップ「Tango245」を開店した結城恵介さん。
膨大な数の服を所有してきた結城さんが、なかでも捨てられなかった服を紹介する企画の第4回目は、シモノゴダールとフィノッロのシャツです。
雑誌、中でも『ブルータス』の「靴だけは外国靴に限る、という人が多い」、『ガリバー』の「イタリアの謎を追え」はバイブルで、ロシアンカーフの存在を知ったのは『ブルータス』、グイドボージやフィノッロを知ったのは『ガリバー』でした。
『ガリバー』で紹介されていた工房群は知らないものが多かったので、直接間接コツコツと購入してきたのですが、すべてが雲上ブランドで…、とくにグイドボージなんかは捨てられるはずもなく。消耗品といえるシャツですら、購入は20年近く前で かなりやれてしまっても手放すことなく残してあります。
雑誌の中でグイドボージ氏が、「シャツの生地は、シモノゴダール」「シャツは、フィノッロ」と話しているのを読んで、シモノゴダールの生地を探しましたが、一向に見つけられませんでした…。
半ば諦めかけていた頃、ダメもとでロンドンハウスのルビナッチ氏に尋ねてみると、「少しなら多分あったよ」と言われて幸運にも譲ってもらえることに。
「迷ったら歯を食いしばって全部買う」が祖父の教えなので、このときは迷わずあるもの全部購入させて頂きました。
シモノゴダールは、一時期見かけなくなり、最近は時折チーフを目にすることはありますが、シャツ生地は展開していないようです。そう考えると、なんとか間に合って良かったと思っています。
これらの生地をコスタンティーノに持ち込んで仕立てて貰ったのですが、ブランド立上げ当初だったのでネームは当時使っていたスカルピーノが付けられています。
ほぼハンドなのにお仕立て代は約2万円、生地代合わせても3万しないくらいだったので、イイ時代でしたね。
一方、こちらのフィノッロは、アンナ・マトッツォのスミズーラが1枚3万円だった時代に、1枚8万円! 現在アンナ・マトッツォが1枚12万円くらいだとすると、いま同じように作ったなら 30マンエン!? になるのでしょうか? さすがに手が届きません…。
正直、当時8万円には痺れましたが、ミラノのカラチェニにて仮縫いをしたり、粗品でネクタイをくれたり、なかなか男前で嬉しいお店でありました。
じつは、シャツの仮縫いを終えた後、ある事件に巻き込まれてイタリア警察に逮捕されかけるという珍事があったため、思い出も含めて絶対に捨てることができませんね。
Photo:Shimpei Suzuki
Edit:Ryutaro Yanaka
結城恵介
ヴィンテージショップ、Tango245店主
DCブランドや英国物、イタリアンブランド、クラシコイタリア等の荒波にもまれながら、会社員時代、出張にかこつけてビスポーク、スミズーラを巡る旅に年数回出るまでに。その趣味が高じて2019年ヴィンテージショップを開店。欧州の銘品、逸品を販売する一方で、日本の若い職人と組んだ別注品も手掛け、海外展開を計画。散財額は、洋品、車、ワインそれぞれで 家一軒分? モットーは「迷ったら全部買う」