あのアンナ マトッツオが手掛けたアットリーニのシャツ!
さて、168回目は 「サルトリア アットリーニ」のストライプシャツです。
いやぁ、桜も見事に咲き誇って Spring has come! コロナの影響で モヤモヤは続いていますが、暑さ寒さも彼岸までってな感じで、春分の日を過ぎたら寒さもほぼ和らぎ、昼間は汗ばむなんて日もチラホラ。
なんて書いてたのに、今夜から雪が降るかもだなんて…。最近の天候は まったく読めない感じです……。
とは言え、ここから秋風が吹くくらいまでは 暖かい。いや、暑いのが基本。朝晩とか、長雨が続く日以外は もうシャツ1枚で充分なのではないでしょうか。
自分は とくに暑がりなので、カシミアニットを脱いだその日から クローゼットの1軍にはシャツが昇格。今まで清水ダイブを繰り返しては揃えてきた「フライ(FRAY)」や「シャルべ(CHARVET)」、さらには"H"のシャツが ローテーションでの出番を控えるようになります。
ボスが提唱する"エコラグ"では、「シャツのような消耗品は、高価なものではなく、ほどよい価格のものを選ぶ」と謳いますが、スーツスタイルを基本とせず、シャツがメインアイテムとなる自分のスタイルを考えると、上質なものを選ぶべきだし、触れる肌が心地好いと感じるものを着ることがストレスさえも軽減させ、生活の質を上げてくれるガソリンにもなるわけです。
と、そんな言い訳を積み重ねて清水ダイブしてきた中で 眠っていたのが今回のシャツです。
「サルトリア アットリーニ」と言えば、 チェーザレ アットリーニの前身。ソフトな"ナポリ仕立て"という概念を生み出したサルトで、彼らが仕立てたスーツは世界最高峰と評され、世界中にその名を知らしめました。
そんなスーツは とにかく高額で、若い時分には手が出ませんでしたが(その後 無事清水ダイブすることにはなりますが…)、シャツならチャレンジできたんですね。
確か、その当時「サルトリア アットリーニ」のシャツは、アンナ・マトッツオが手掛けていると聞いてまして。ロンドンハウスから独立した彼女が作るシャツは、柔らかい手縫いでの襟付けや袖付けが特徴。背中のギャザーの寄せ方など、マシンメイドとは異なる着心地を提供し、インポートシャツの中でも最も高額な部類でした。
あの頃は ルイジ・ボレリなんかの3万円代のシャツが当たり前のように売れていて、なんならアンナ・マトッツオやフィノッロ、シニスカルキの超高級シャツも普通に買う人がいたので、あまり悩まずに手に入れたものの、落ち着いて考えたらデイリーにガシガシ着るような御身分じゃない…。
其れ相応なポジションにでもなったら 袖を通そうと箱に入れて眠って貰っていたら、大事な骨を埋めたのを忘れてしまう犬のように 忘却の彼方へ……
先日 クローゼットを整理していた際に 他の色々と一緒に姿を現しました。まだ、自分が相応な人間になれているのかは 甚だ微妙なんですが、このまま仕舞ったら またその存在を忘れてしまいそうなので、今回は思い切って袖を通すことにしてみます。
そろそろ「いつか着よう」って服を買うのを卒業しないと 同じような過ちを死ぬまで繰り返しそうです。なんとかは死ぬまで治らない。いや 死んでも治らない…のか。
Photo:Shimpei Suzuki
Text:Ryutaro Yanaka