合理性より感情的に。フレンチSUVの魅力
お盆休みが終わったとはいえ、世間はいまだ夏休みシーズン。街を走ればいかにも不慣れといった感じでトロトロ走るクルマが多く見受けられます。休日を楽しむためのドライバーと日常に社会復帰したドライバーでは体内時計が違います。当然、クルマ同士の事故も増えます。
こんな時期に気付くのはSUVの多さです。時代とともにトレンドも変わり、ステーションワゴン→ミニバン→SUVへ。いまやファミリーカーはSUVという時代です。車種選びでも選択肢は広く、また、国産勢も魅力的なクルマを揃えます。
フォルツァ世代を40歳代中心と仮定すれば、中年真っ盛りで初めてクルマを買う方はいらっしゃらないと思います。少なくとも3~5台は買い替えたご経験をお持ちなのでは? そんなライフスタイルをイメージすると、すでにアナタはクルマ上級者です。
輸入車ライフも相応のキャリアとなると、少々ドイツ車に飽きてきます。初めは信頼性を考慮しドイツ車を選びがちですが、それも2台、3台と続けば、クルマの出来に感心するものの「なんか足りないな」とふと思う瞬間があります。
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そんな時こそフランス車やイタリア車など、ラテン印の出番です。で、今回はフレンチSUVを小特集。グローバル化のデメリットなのか、お国柄を反映した個性は希薄になりつつある昨今ですが、とはいえ、まだまだまだフランス車は個性のカタマリ。内外装のデザインやディテール、乗り心地の面でフレンチSUVは魅力的です。
フランスの大規模自動車メーカーは、プジョー、シトロエン、DSオートモビルズのPSAグループ、そしてルノーという4ブランドで構成されます。まずはそのブランドごとにザックリといまが買い時のモデルを洗い出しましょう。
この4ブランドのなかで、日本でもっとも売れているのはプジョーですが、最新モデルの2008はまだ日本に導入されていません。3008とその3列シート採用版である5008も延命モデル。またルノー・キャプチャーにしても同様で、3年後の初回車検を迎えるまでに鮮度は落ちるでしょう。日進月歩の電子制御による安全技術(自動運転技術を含む)を考慮すれば躊躇してしまいます。
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こうなると選択肢はぐっと狭くなり、結論からいえば「シトロエンC5エアクロス(記事トップ画像)」か「DS 7クロスバック」という二者択一となります。ブランドバリューでマウントすればDSが格上ですが、そんなヒエラルキーを無視すれば車両そのものの魅力は拮抗しています。
フランス本社のリリースによれば「シトロエンC5エアクロス」は、2019年初頭にデビューしこの半年で約5万台の好セールスを記録。上々の滑り出しなのだそうです。日本でもこの春から本格的に導入されたモデルですから鮮度も抜群。なんとも個性的で表現し難い存在感が光ります。
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特筆すべきは新開発の油圧サスペンションPHC(Progressive Hydraulic Cushions™)の採用です。メカニズムを解説すると長くなりますので割愛しますが、とにかく乗り心地がいい。シトロエンといえばかつてハイドロニューマチックという特殊なサスペンションを採用し「マジック・カーペット」と評されたものですが、PHCはこのライド感を新時代に再現しようと開発したシステムなのです。
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パワーユニットはディーゼルの2リッター直列4気筒ターボでガソリンエンジンの設定はありません。駆動方式はFFですがオフロードのテストも入念になされていますので、走りのポテンシャルは十分です。ワングレード展開なので購入時に迷うことはないはず。ただし、サンルーフが欲しければオプションのナッパレザー・パッケージ(36万円)をおごるしかありません。ベースとなる車両価格は424万円。
クルマ事情に詳しい方なら「シトロエンにはC3エアクロスがあるじゃないか!」とご指摘いただくことと思いますが、前出の新開発サスペンションの採用はコチラだけ。よってシトロエンの推奨モデルは「シトロエンC5エアクロス」とします。
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明らかに上質でラグジュアリーな「DS 7クロスバック」ですが、この夏からさらに魅力を高める「オートクチュール」というBTOサービスを開始しました。ボディカラー、インテリア、ホイールといったオプションメニューを組み合わせると、なんと432通りの仕様を作れるそうです。
車両価格はガソリンの1.6リッター直列4気筒ターボエンジン搭載車が559万円、ディーゼルの2リッター直列4気筒ターボエンジン搭載車が579万円です。駆動方式はどちらもFF。ちなみに画像のインテリアはオプション価格30万円也。単純に考えればご予算600万円スタートな「DS 7クロスバック」です。
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こちらも乗り心地よく、常時センサーで路面状況を拾いサスペンションを先読み制御します。そのライド感は下手なミドルセダンより遥かに快適。また、アウター側のドアハンドルを収納式とすることでボディ表面をフラッシュサーフェイス化。小洒落た小技も見逃せません。ベース価格で比較すれば両車の差は約100万円。よってその対価はご自身でお確かめください。
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合理的で機械として優れたドイツ車がある一方で、欧州にはフレンチSUVのようにディテールに至るまでファッション的な魅力に溢れたクルマが存在します。どちらの方が優れているという問題ではなく、むしろ価値観の違いといった方がいいのかも知れませんね。感情的フレンチSUVでホッコリ。そんな時間は悪いはずありません。
Text:Seiichi Norishige
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