FASHION ― エディター ヤナカの「こじラグ」

【こじラグの起源!?】タガが外れるキッカケとなったトム ブラウンのコートとは

2018.11.10 2018.11.10
2018.11.10
自分が本当にイイと思う、一流品を買い集めていたら、無類の服好きが集まっているはずの編集部内でも「買い方がおかしい」「こじらせてる」と。自分じゃ、至極普通だと思っていたのに…。ホントにこじらせてるのか確認すべく、自分が買ってきた愛しい服達を紹介していく企画「こじラグ(※こじらせラグジュアリー)」を始動させます。これがお買い物の参考になるかは分かりませんが…、世の買い物ジャンキーたちを安堵させられたら本望なのです(笑)。

購入価格を言うのが申し訳ないほどの値引き率

さて、114回めは108回めでもチラッと触れた「トム ブラウン(THOM BROWNE)」のバルマカーンコートです。2005年秋冬で、伊勢丹が初めて取り扱ったシーズンのモノ。まだまだ認知度が低かったのに加え、その奇異なフォルムと法外な価格設定とが災いして ほとんど売れず、最後に投げ売り状態だったものを救出的に清水ダイブしました。

ただ、元値は中古の軽自動車くらいだったので、投げ売られてても そこそこな価格。でも 実際に触れて袖を通してみたら、悩む理由は見当たりませんでした。

この美しく縦に走るヘリンボーン地。そして、トム ブラウンの意匠のひとつである 高い位置のボタン付け。もちろんテーラリング技術も素晴らしく、着心地も抜群で重さを感じさせない。

そして 後ろ姿も美しく、かなり高く深い位置まで取ったベント、同素材をなぜか四角にして当てたエルボーパッチ(肘当て)。さらには、襟を立てると初期のデザインアクセントだった3本ラインが白のグログランテープで表現されているんです。

そうそう 忘れちゃいけない、もう1個。なんと裏地がメッシュなんです。こんなクラシカルな面持ちで裏地がスポーティなメッシュ素材だなんて、どうかしてるぜっ!

まだ齢30目前で、一般に流通してるスーツやコートに袖を通すほど お利口さんにはなれず、でも ただのデザイナーズは嫌。ドレスをきちんと理解していて、とにかく上質なモノを作っているブランドしか着たくないというワガママ盛りな自分にはトム ブラウンは完璧すぎましたし、氏の提案するスタイルがメンズファッションシーンにおいては賛否両論だったっていうのも天邪鬼な自分にはピッタリ。清水ダイブを後押ししましたね。

まさか、この清水ダイブがこれから始まる悪夢の幕開けとなるとは つゆ知らず…。おぉコワっ!

結構 硬めでフォーマルなバルマカーンではありますが、スーツの上に着る以外にも、インナーにフーデッドのパーカを着てカジュアルダウンしても様になるので、もしかしたらその後にジャンジャン買い足したトム ブラウンのスーツより全然着用機会は多かった気もします。

最近は他のコートもたくさん増え、袖を通す機会はほとんどなくなりましたが、マイ・ファースト・トム ブラウンってコトで思い入れもありますし、このコートの腕には幾重の色恋話も絡みついていますので、一生捨てることはないと思います……

いやいや、そんなオチじゃなくて…。この撮影で久々に引っ張り出しましたし、やっと寒くなってきたので、この秋冬は復活させて八面六臂の大活躍をしてもらおうと思ってるって話でした。

Photo:Naoto Otsubo
Text:Ryutaro Yanaka

Author profile

谷中 龍太郎
谷中 龍太郎
Yanaka Ryutaro

FORZA STYLE シニアエディター

さまざまな雑誌での編集、webマガジン『HOUYHNHNM』編集長を経て、『FORZA STYLE』にシニアエディターとして参画。現在までにファッションを中心に雑誌、広告、カタログなどを数多く手掛け、2012年にはニューバランス初となるブランドブックも編纂。1976年生まれ。

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