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FASHION 理想の男

レストランでもエレヴェーターでも……
レディ・ファーストが普通に出来る男

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第2回「レディ・ファーストが、普通に出来る男」

伊丹十三著の『ヨーロッパ退屈日記』は、男にとっての最高の読本のひとつ。その中にこんな一節があります。

「エレヴェーターの前に数人の男女が待っていたとする。ドアが開いたとき真先に降りてくるのは男である。また真先に乗り込むのも男である。背広とネクタイに身を固めた男である。恥ずかしいではないか。筋が通らないではないか。俺はそういうことはしないといえる人が何人あるか」

これは、欧米では常識であるレディ・ファーストを、日本人の男たちはわきまえていない! ということを書いたもの。この本が書かれたのは1965年。それから50年以上が経った今でも、日本の状況はあまり変わっていないようですよね。

さて。あなたはレディ・ファーストをしていますか。

レディ・ファーストは、グローバル社会でのルールで、マナーで、エチケットです。

ですからFORZA読者のような国際派の男性は、ぜひ、身に着けておきたい。そうですよね。

それにレディ・ファーストは「簡単に出来る」というのが大きなポイント。用意するものなど何もなく、身ひとつで行うことが出来る。特別な努力もいらないし、お金もまったくかからない。となれば、やらない理由はない。簡単なのに女性に親切に出来るなんて、素晴らしいことじゃありませんか。

しかもそんな簡便さにもかかわらず、
レディ・ファーストをきちんと行いさえすれば、ルールやマナーやエチケットをわきまえた格好いい男に見える。

変ないい方ですが、とても「コストパフォーマンスが高い」のです。ですので、そういう意味でも、レディ・ファーストはやるべき。「損」だ「徳」だというのではなく、まさに「やらない」という理由がないのです。

が、その一方。やはり男にとってのよき本である山口瞳著の『礼儀作法入門』には、こんなことが書かかれています。

「ホテルに泊まっていて、一階の食堂へ行こうとしてエレベーターの前に立っていると、中年の外国人夫婦がやってきた。私はエレベーターの正面に立っていたのであるが、一歩さがった。相手は女連れであるからだ。すると、婦人は前に出て、つまり、私が立っていた位置に立った。やがて、扉が開いた。婦人が乗った。彼女の夫は私に、どうぞと言った。私が乗る。ついで夫が乗る。婦人が、私に、何階まで降りるのかと訊いた。私は一階と答え、婦人がボタンを押した。(中略)これが、私の相手が日本人夫婦であると、絶対にこうはならない。第一に、女が照れてしまう。モジモジとする。夫の影に蔭にかくれようとする。こうなると、マナーが発揮される場がなくなってしまう」

これもレディ・ファーストの話。こちらでは日本では女性もレディ・ファーストに不慣れだと書かれています。この本も40年以上前に書かれたもの。この状況もあまり変わっていないですよね。

つまり日本ではレディ・ファーストは簡単にすることができない。実際、海外ではごく自然に出来るのに、日本ではぎこちなくなってしまう、という方もきっと多いでしょう。日本ではレディ・ファーストが、男性も、女性も、なぜだか気恥ずかしい感じになってしまうのですよね。

では、どうすればよいのか。おそらく間違いがないのは、日本でのレディ・ファーストは海外よりも「控えめにする」ということなのでしょう。

たとえば、エチケットの本に「レストランで女性の椅子を引いてあげる」というのがよく書かれていますが、これはやめたほうがいい。階段を降りるときに「手を取ってあげる」というのも、ハイヒールが高いなどでよほど女性が困っていない限りは、しないほうがよい。

なぜなら、そういう行為は本場の西洋社会では当たり前でも、日本ではとても目立つから。そのため、やっている男性は滑稽だし、女性はとにかく恥ずかしい。先の『礼儀作法入門』には、こんなことも書かれています。

「マナーに関しては、美しく見えることが正しいことなのである。ミットモナイことは悪である」と。

だから日本でのレディ・ファーストは、エレベーターで先を譲るとか、ホテルやレストランやショップではドアを開けて先に入れて(出して)あげるとか。クルマでドライブするときには、助手席のドアを開けて女性を座らせドアを閉めてから、運転席に着くとか。

歩道のない道を並んで歩くときには、必ず自分がクルマの走る側を歩いて女性を守るとか。階段ならば、登るときには後ろに、降りるときには先にと、万が一に女性が転んだときに身体で受け止められるようにしておくとか。それぐらいの、さり気ない、というのがよいのです。

要するに、洋服の着こなしと同じで、頑張りすぎると格好悪い。レディ・ファーストは普通に出来る男が素敵なのです。

Photo:Getty Images
Text : Yutaka Fukuda



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