酒好き、タバコ好き、辛い物好き…あなたはいくつ当てはまりますか?
仕事の付き合いで酒席に顔を出すことも多い、スマフォー(Smart 40's)世代。手段と目的が逆転して、ついつい酒量が増えてしまうのは、サラリーマンの悩みの一つですよね。食道がんは女性よりも男性がなりやすく、飲酒や喫煙が発生原因の一つと言われています。飲み屋で酒を飲みつつ、タバコを一服…なんて多重リスクにハマっていませんか?
名医が名医を紹介して数珠つなぎ連載をする大人気企画の2回目。大腸がんの権威である、NTT関東病院の大圃先生からご紹介を受けたのが、今回ご登場いただく、昭和大学消化器科・一般外科部門教授で同大副院長の村上雅彦先生です。
LEONやGOETHE、そしてもちろんFORZA STYLEを愛読しているという「ちょいワル」ドクターですが、見た目に反して(おっと失礼)、腕は超一流。従来の手術では、首や腹、胸を切開し、時には肋骨も削るなど患者の負担が大きい大手術が必要でしたが、胸腔鏡と腹腔鏡という2つの内視鏡を組み合わせ、傷口も小さく、痛みを軽減、感染症の危険も少ない最先端の治療方を確立させた立役者なのです。
「仕事の付き合いで飲酒をする方はまずは一度、検診を。早い段階で見つけられれば内視鏡の治療で完治でき、翌日には歩けます」
と説く村上先生に、働き盛りのダンナが気をつけるべきことを、FORZA医療班がとことん取材してきました。
連帯を具現化したチームの象徴
― ―早速ですが、先生。手術着が黒いですね。ド肝を抜かれるというか、インパクトがありますね。
村上:お褒めにあずかり恐縮です。09年に教授になりまして、チームで手術や問診をしていくために一体感を出したかった。そこでこのスクラブ(手術着)を考案したんです。医師と言えば白衣は当たり前ですが、私たちのチームが一目にどこにいるかわかるように、ブラックを選びました。縁はゴールドにして、胸や腕にデザインを入れて、一般的には馴染みのないスクラブになりましたが、連帯を具現化するためにしたことです。
患者さんの反応?『精悍に見える』と好評でしたよ。いまでは、病院内ではあのスクラブを見れば『村上さんのチームだ』と定着しています。おまけに実用的なんですよね。汚れが目立たないし、小太りも隠せる(笑)」
― ―スタンドカラーのような白衣も小粋ですよね。
村上:アシックス製です。スポーツメーカーのものは機能性が高く、素材が動きやすくできている。手術の前にすぐ脱げる。スクラブも夏用と冬用の二つあり、夏のものはサッカーウエアの素材でよく使われるメッシュにして、汗をかいてもすぐ乾くようにした。B型なので他人と同じものは嫌な性分です(苦笑)。
― ―村上先生のご専門である食道がんなのですが、「50歳以上で、お酒とタバコを嗜む人は要注意」とよく耳にします。これは本当なのでしょうか。
村上:間違いなくアルコールは危険因子です。がんになるリスクは、摂取量と相関関係があるので、まずは飲む量を減らしましょう。FORZA STYLE愛読者のダンナには、営業職などで職務上、酒席に参加しなければならない人もいるでしょうから『断酒せよ』、とまでは言いません。量を抑えてくださいね、ということです。
私が診た45歳の患者さんも、よく深酒をするような生活習慣でした。「いちばん危ない」とされているのが、元々はお酒が弱い人。少し飲んで顔が真っ赤になってしまうような人で長期間アルコールを飲み続けていると、食道がんに罹るリスクが跳ね上がります。
― ―熱い飲食物もリスクのようですね。
村上:医学的に言えば、熱いもの、辛いモノなど、刺激の強いものは食道にはダメージになります。でも、それほど厳密に守らなければいけないというものでもありませんよ。
― ―それよりも、アルコールとタバコに関して注意を向けたほうがいいということですね。次は、食道がんになりやすいといわれる年齢について教えて下さい。
村上:食道がんの患者さんは、50代後半から70歳までがボリュームゾーンですね。しかし、40代ぐらいからジワジワと患者さんが増えてきます。繰り返しになりますが、深酒をするような方は40代でも要注意です。
― ―食道がんは自覚症状に乏しく、気がつかないうちに進行しているケースもあるそうですね。
村上:モノが飲み込みづらくなるというのが、食道がんの一般的な自覚症状です。しかし、食道の嚥下力は強く、小指一本程度の大きさのものであれば、スルッと飲み込めてしまう。だから食べ物をうまく飲み込めなくて、『おかしいな』と思った時には症状がかなり進んでしまっているんです。この状態では、半分くらいの確率で、後述する胸腔鏡・腹腔鏡での手術ができないほどの大きさまでがんが大きくなっています。反対に、初期の食道がんであれば、手術なしで治療できるケースもあるんです。
だからこそ、タバコや、お酒を嗜む人で40歳以上であれば一度、精密検査をすることを強くお勧めします。内視鏡で食道の中を見れば、初期のがんもすぐに見つけられるからです。食道がんは、早期発見が大きなキーとなるんです」
― ―40過ぎたら、まずは内視鏡のカメラを飲むと。
村上:全国の大学病院クラスであればほぼ施設があり、専門的な知見のある先生もいます。早期発見に勝るものはないので、40歳の節目でまずは一度内視鏡検査をし、50代になれば毎年一回、内視鏡検査を受けた方がいい。特にお酒が好きな人は40代でも検査を受けたほうがいいですね。
― ―食道がんのオペは大変だと聞きます。
村上:食道の周囲には気管や心臓、肺の他、重要な血管や神経も多く『いちばん危ない手術』と言われています。従来の方法の手術であれば、首、胸、腹と三カ所から切開し、場合によっては肋骨も切除する。大きく胸を開けば、呼吸器機能の低下などの負担も生まれ、もちろん痛みも伴います。呼吸をするだけで痛いので、数日は人工呼吸器を付けて寝たきりです。