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FORZA STYLE - 粋なダンナのLuxuaryWebMagazine

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最近“心が震える”ことってありましたか?

今日の夜、何してるの?

え? 一人で映画!? そんなことして寂くないの??

そんなことないよ。

だって映画が恋人だから。

FORZA STYLE読者のみなさま、はじめまして。今回から映画コンシェルジュとして連載をスタートさせていただく日髙夏子です。そう、FORZA STYLEの「東京独身レポート」にこじらせ女として登場していたのが、何を隠そう、私です。この会話は私の週末によく交わされるもので、完全なるノンフィクション。

実は私が一番こじらせているのは・・・。映画への愛だったんです!! 私にとって映画とは、“新しい出逢いを与えてくれる”存在です。大人になると新しい出逢いや気付きって、なかなかありませんよね。ましてや、20年間女子校というとてつもなく閉ざされた世界で生きてきた私は、驚くほど全てをこじらせてしまい・・・。でも、そんな私を広い世界へと羽ばたかせてくれたものが映画でした。

映画に出逢っていなければ、きっと世間とどんどん乖離(かいり)していることに気付くこともなく・・・。こじらせ女どころの騒ぎじゃなく、女の園に生息しすぎて、見た目だけはなぜかイケイケの前髪かきあげ女。中身は圧倒的な喪女という“最強モテないギャップ”を持つ女になっていたと推測されます。怖い怖い。

映画が与えてくれる出逢いは、感動的な物語や素敵な俳優・監督との出逢いはもちろん、知らなかった世界やそこにある現実を突き付けられることも。更に、心の奥に潜んでいた自分の感情や価値観をも見出してくれたりします。何よりも、映画を通じて出逢えた大切な人や、築くことが出来た強い絆が私の誇りでもあります。

幼い頃から家族全員が映画好きで、休日は映画館やレンタルビデオ屋に通い、大学時代は授業よりも映画館でのアルバイトを優先。就職先に今の会社を選んだのも、映画に関われることが決め手でした。そんなこんなで、これまで見てきた映画は約4000本。今も時間があれば、ふらっと一人で映画館に行って両サイドがカップルという辛すぎる環境の中で恋愛映画を見たり、蔦屋書店でいちゃいちゃするカップルを横目にぼーっとDVDを眺めたり・・・。こじらせ女全開で映画との濃厚なデートを楽しんでいます。

こんな見た目やしゃべり方からなのか、ミステリアスで何を考えているかわからない・・・。と男性を悩ませてきた私ですが、映画の話をしている時だけは別。人格が変わったかのように饒舌(じょうぜつ)で、楽しそうに映画の話をする姿が、彼氏のことをのろける普通の恋する女の子のようだと驚かれてきました。

ということで、この連載では私の愛する恋人・・・。いえ、映画について思いっきりのろけさせていただこうと思います! ただ、映画については自由恋愛。私だけの一人占めにするのではなく、皆さんも愛する作品と出逢える場にしていただければ嬉しいです。

今回ご紹介する恋人は「チョコレートドーナツ」

©2012 FAMLEEFILM,LLC

タイトルからして、あまーい恋人(恋愛映画)のようですが・・・。そんなこと一切ありません。初回をこの作品にした理由は、すごくシンプル。今まで見てきた映画の中で、ダントツで一番泣いた作品だからです。最後の10分間は嗚咽が止まらず、生まれて初めて声を上げて泣きました。全米各地の映画祭で観客賞を総ナメにし、まさしく「全米が泣いた」この作品。(このキャッチフレーズ、よく聞くけど本当に泣いてる作品ってほとんど無い気がしてなりません)日本でも劇場公開時に、箱ティッシュをスクリーンに設置するイベントが行われたほどだそう。

©2012 FAMLEEFILM,LLC

1970年代の実話が基になっており、ゲイである事を隠して生きてきた弁護士のポールと、彼と強く惹かれ合いシンガーを夢見てステージに立つルディ。ルディの隣室で麻薬依存症の母親と住んでいて愛情を知らずに育ったダウン症の少年・マルコ。そんな3人が偶然出逢い、必然のごとく一緒に暮らすようになり、歪な形の“家族”を創っていきます。しかし、そんな“家族”が世間に受け入れられることは難しく、愛し合いながらも無常にも引き離されてしまうというストーリーです。

©2012 FAMLEEFILM,LLC

この映画が私に与えてくれた「新しい出逢い」は、“心が震える瞬間”です。FORZA STYLEの読者のみなさん、最近“心が震える”ことってありましたか? 思わず涙が止まらなかったり、溢れる感情をどうすることも出来なかったことってありましたか? きっと、仕事でもプライベートでも大きな責任が伴う重要な立場にある皆さんは、感情を押し殺して、冷静な振る舞いに徹することが多いと思います。私も、スマートに振る舞うイケフォーは余裕があって素敵! と思ってしまうのは確か。しかし、そんな紳士が思わず心が震えてしまった姿の方が、私には魅力的なんです。この作品は、そんなスマートに毎日を過ごすが故にカチカチに固まってしまった貴方の心を、容赦なく揺さぶってくれます。

私の会社はオフィスの至るところにテレビがあり、特にスポーツシーズンは各所から歓声や悲鳴があがります。中でも2年前の全米オープンテニスの時は錦織君の活躍もあり、社内はまさにお祭り騒ぎ。しかし! そんな時でも冷静に仕事を続けてる先輩がいました。いつも淡々としていて、いわゆるイケフォーの代表のような存在。

さすがにここまで騒がしいのは申し訳ないなーと思いながら、気付くと私も夢中になっていました。激闘の末に試合は終了。結果を見届けると、みんな自然と仕事に戻っていき、私もふとデスクに目線を戻そうとすると・・・。あの先輩の手元が小さく震えているいる!? どうしたんだろう? と焦りながら顔を上げると、そこには、目に涙をいっぱいに浮かべじっとテレビを見つめる先輩の姿が。画面の中では、錦織君との激戦の果てに悲願のグルンドスラム優勝を勝ち取ったマリン・チリッチがインタビューに応えていました。その姿に驚きながらも、思わず見惚れてしまった私。そう、心が震える姿が。そして、それに抗えずにいる素直な姿が、とっても素敵だったんです。きっと私と同じように、こんなイケフォーの姿に思わず心が奪われてしまう女性も多いのではないでしょうか?

私がこの映画でみなさんに感じて頂きたいのは、この先輩のように2つの「心が震える瞬間」です。

1つ目は、引き裂かれてしまう3人の愛の切なさを感じて、自ら震える心。

2つ目は、私が大好きなシーンでもあるラストシーンで感じて頂きたい。

©2012 FAMLEEFILM,LLC

ルディが辛さをこらえながらプロとしてステージに立ち、溢れ出てしまいそうな想いをぶつけるようにボブ・ディランの名曲「I Shall Be Released(アイ・シャル・ビー・リリースト)」を歌いあげます。そんなルディの歌声は、3人の運命を狂わせた登場人物達だけでなく、私たちの観る者の心にまで強く刺さり、大きく揺さぶります。その歌声があまりにも痛くて切なくて・・・。大粒の涙で字幕が霞んでしまうほど、私は号泣しました。

誰かの心の震えに触れることで、それを感じまっすぐに受け入れることで、自分も強く揺さぶられてしまう・・・。誰かの想いに震える心。そのどちらにも出逢えるのが、この作品の素晴らしさではないでしょうか。アメリカのコメディアンとして活躍したジョージ・カーリン氏が、こんな素晴らしい言葉を残しています。

「人生はどれだけ呼吸をし続けるかで決まるのではない、どれだけ心のふるえる瞬間があるかだ」。私がこの連載を始めたのも、出来るだけみなさんに心が震える瞬間との出逢いをお届けしたかったから。心を震える瞬間を重ねれば重ねるほど、貴方はもっと魅力的になるはずです。だからこそ、私自身が今まで一番心が震えた作品を、まず最初にご紹介させていただきました。

ちなみに、こじらせ女である私にとって、同性愛って本当にすごいこと。心から尊敬しています。派手にこじらせている私は、まず、人を好きになることが滅多にない。ましてや誰かを愛するなんて気持ち、未だによくわかりません。でも、同性愛の方って、相手の全てを受け入れるどころじゃなく、タブーとか偏見とかそういう分厚い壁みたいなものを乗り越えてまで相手が好きってことですよね?そんなに精一杯の気持ちで人を好きになれるって、本当にすごい。そんなパワー、どこから湧いてくるんだ??私にも分けてほしい・・・。と真剣に思っています。

そんな私は、この映画を見てからさらにこじらせ・・・。女子会で女友達が彼氏とこんなことで喧嘩しちゃってどうしようーとか、旦那にムカつくことを言われて許せないーとか言っている姿を見ると、いやいやそんなの些細なコトじゃないか! ルディとポールの世間から受けた偏見に比べたら、どうでも良いことじゃないか! 一緒にいれるだけ幸せだと思えないのか!! と、心の中で思ってしまう自分がいます・・・。この作品が貴方にとってもかけがえのない恋人になれますように…。

それでは!

Photo:Riki Kashiwabara
Text:Natsuko Hidaka

Edit:栗原P

 

【チョコレートドーナツ】
http://visual.ponycanyon.co.jp/pickup/movie/pcxp50259/

【撮影協力】
ユーロスペース
渋谷区円山町1‐5 KINOHAUS 3F
03-3461-0211
http://www.eurospace.co.jp/

【ひだか・なつこ】小学校から大学までの16年間を附属の女子校で過ごした“こじらせ女”。(幼稚園もほぼ女子校だったので、それもカウントすると約20年間)幼い頃に家族の影響でエンターテイメントに目覚る。中学・高校をミュージカルに、大学生活を映画館でのアルバイトに捧げ、海外ドラマ廃人も経験する。映画やエンターテイメントとより多くの人を結びつけたいという想いから、放送局に入社。今でも毎週末は映画館で過ごし、これまで見た作品は約4000本。そんな映画への愛をこじらせ、コンシェルジュとして今回の連載を担当する。



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