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LIFESTYLE 女たちの事件簿

「どうしてもお葬式に行けない…」実家までの交通費を出せず涙【リアル『燕は戻ってこない』な32歳の東京女子がついに売り始めたもの】

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不倫や浮気、DVにプチ風俗……。妻として、母として、ひとりの女性として社会生活を営み、穏やかに微笑んでいる彼女たちが密かに抱えている秘密とは? 夫やパートナーはもちろん、ごく近しい知人のみしか知らない、女たちの「裏の顔」をリサーチ。ほら、いまあなたの隣にいる女性も、もしかしたら……。

29歳の女性が貧困にあえいだ結果、ある一線を超える姿を描いたドラマ『燕は戻ってこない』が大きな話題となった今シーズン。毎週放映日にはSNSのトレンドワードに『燕は戻ってこない』の文字が躍り、その注目度の高さを伺わせた。

同ドラマでは、キャスティングの妙や攻めの描写とともに、「登場人物誰にも感情移入できない」「主人公にいちばん腹が立つ」といった、他であまり見かけない視聴者の感想も印象に残る。

若者の貧困を考えるための数字について危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏に聞いた。

「今回話題になったドラマでは、北海道から上京したものの生活が苦しく、深い考えもなしに代理母を引き受ける女性とその依頼者らの姿が描かれています。

総務省の家計調査報告書によれば、20代の平均生活費は約16万円。しかし、これは家族構成や居住地域を限らない全体平均らしく、住居費は3万円台に算出されています。

東京で1人暮らしするとなれば、この水準では到底生活が立ち行きません。また、いつ貧困に陥ってもおかしくない状況の人が多いであろうことも容易に想像できます」

・・・・・・・・・・・・・・・

今回は、『燕は戻ってこない』を夢中になって視聴したという32歳の女性に取材を試みた。彼女はこのドラマを観て「金欠の主人公が大好きなおばさんの葬式に出られないくだりがあったが、まさに自分のことじゃないかと感じた」という。

「胸糞すぎても、出てくる人みんなが異常でも、それがかえってリアルなドラマで引き込まれました。人間てみんな身勝手でどこか狂ってるし、考えがコロコロ変わる」

こう話し始めたのは32歳の派遣社員・宮城ほなみさん(仮名)。ドラマで共感した「主人公が身内の葬儀に出られなかった場面」に似たほなみさんの経験とは?

「私の父親が61歳で亡くなったのは一昨年のことです。母から状態が良くないとは聞いていましたが、突然報告の電話がありました」

実家にはコロナもあって何年も帰っていなかった。生まれ育った甲信越地方の小さな町を出て上京し、すでに14年が経つ。

「大学を出ましたが、役者になりたくて小劇団に入ったんです。バイトと劇団の活動に明け暮れました。劇団は空中分解してしまったのですが、その時すでに私は28歳。

これではまずいと思い、通信講座で医療事務の勉強をしました。その講座で非常用に取っておいた貯金をまず使い果たしています。で、いろいろあって結局派遣で事務職につき、今に至ります」

映画などを観てファンだった石橋静河が主演を務めるドラマが始まることを知り、観始めたのが『燕は戻ってこない』だった。

「石橋さん演じる主人公は派遣で病院の事務をする29歳です。北海道から東京に憧れて上京したのに生活は苦しくてボロアパートにしか住めず、職場でできた友達も風俗をして男に貢いでいたりして……。
2人で地味なお弁当を屋上で食べて愚痴っているシーンを観ていたら、これは私だ、と思って自然と泣けてきました。無力で、目先のことしか考える余裕がなくて」

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いつからこうなったのか、とほなみさんはいつも思う。いま住んでいるワンルームマンションは、最寄り駅から徒歩20分で家賃が約70000円。手取り月収3分の1は優に超える。

「ドラマで、主人公の住むアパートに気持ち悪い高齢男性がいて、このことが主人公の悩みと苛立ちを深めるんですが、私の今のマンションにも気持ち悪い人がいます。

女が住んでる部屋を把握しているのか、ポストにアダルトビデオのジャケットのコピーみたいなものを入れてくる。凄く気持ち悪いけど、引っ越し費用がないからずっと住んでます」

なぜそうまでして東京で暮らすのか、と問う。

「あんなクソ田舎でただ年を取っていくなら、まだ住み慣れていて、夢の断片が残ってる気がする東京の方がいいです」

ほなみさんは父の死に際し、母親から「特急乗るのに使いなさい」と言って振り込まれた1万5000円を、通信費と光熱費の支払いにあててしまった。口座に2000円ほどしかなかったためだ。

「いつもはぴったりなくなるのに、少し前に友達の結婚パーティーに呼ばれてしまって、会費とお祝いを買ったので、ちょうどその分足りなかったんです。で、使ってしまいました。それで、高速バスに乗るお金すらなくて、帰れなくなりました」

母にお金がなくて帰れないというと、「劇団なんかにうつつを抜かしてきたからよ、バカもんが」と怒鳴られた。

「かわいがってくれたお父さんの葬式に出ないなんて……親不孝にもほどがある、と泣かれましたね」

四十九日法要には必ず来いと言われたほなみさん。

「もう少し振り込んであげるという母からの言葉を期待していましたが、うちの実家も余裕がないので、やはり無理でした。父の葬儀の日には、せめてもの供養と思って、父が好きだった歌をお風呂で歌って泣きました」

四十九日に実家へ帰りたいと思ったが、給料が変わるわけでもないし貯金などもちろんない。だがほなみさんは、一人娘が手を合わせに来ることを父が待っている気がして、何とか法事までにはお金を作りたいと考えた。

SNSで簡単に稼げる方法を探し、何度も風俗の体験入店に行ってみようと思ったが勇気が出なかった、と語るほなみさん。

記事の後編では、ほなみさんがお金を作るためにあるものを売り始めた経緯についてお伝えする。

取材/文 中小林亜紀

▶︎後編に続く


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