内田洋子さん(仮名・48歳)は、大手飲料メーカーの商品企画部に勤める夫の航平さん(仮名・51歳)と二人暮らし。二人は友人の紹介で知り合い、1年半の交際を経て洋子さんが35歳の時に結婚をした。
夫はあまり話すタイプではないが、洋子さんの話にじっくりと耳を傾けて丁寧に受け答えをしてくれる。また、結婚後は「自宅でゆっくり、洋子の好きなことをすれば良い」とだけ言い、有難いことに専業主婦をさせてくれている。
子宝には恵まれなかったが、1年前より保護センターで引き取った豆柴を飼いはじめ、現在は夫と一匹で幸せに暮らしている。
洋子さんの暮らしは、まさに平穏そのものだった。
気難しいママ友との付き合いもないし、毎週木曜日に通っている趣味の料理教室で知り合った二名の主婦(30代、40代)の友人もいる。
また、夫が休みの日にはドライブをしたり、二人の共通の趣味であるクラシック音楽のコンサートや美術館に絵の鑑賞に出かけたりと、充実した日々を過ごしていた。
ただ、夜の営みだけは非常に淡白だった。
夫から求められることはほぼ無く、体を重ねるとしても2~3ヶ月に1回の頻度だ。そして夫は「うなじに息を吹きかけて欲しい」「罵ってほしい」など、多少Mよりの性癖でもあるのだろうか、営みの最中に何かと要求が多かった。
ある日のこと、夫は海外出張で2週間ほど自宅を空けることになった。
このような海外出張は、コロナが始まって以来実に3年ぶりのことだろうか。
夫が旅立った後の自宅は、想像以上にがらんとして、洋子さんは心細くなってしまった。ふとため息をついた瞬間、洋子さんのスマホに1件の通知が届く。
「荷物を宅配センターでお預かりしています」
一体、何の荷物だろうか。
洋子さんの自宅では、宅配業者の「メールお届けサービス」に登録している。ここには、夫と洋子さんの荷物の状況が瞬時にわかるよう、メール通知がされる設定になっているのだ。
しかし、今週はオンラインショップを利用しなかったし、今日の日付で荷物が届く予定はなかった。
そもそも夫の荷物であれば、夫が普段から利用している駅前の保管ボックスに届くようになっているので、洋子さんは「おかしいな……」と思った。
荷物を受け取るべきか、また緊急のものであればすぐに開封すべきなのか。
いますぐ夫にメールで質問をしたかったが、今回の出張先は初めての国なので、連絡がつくまでにはあと半日以上はかかりそうだ。
そこで洋子さんは、宅配業者のセンターがある営業所に車を走らせ、夫の荷物を受け取りに行くことにした。
営業所に着くと60代後半だろうか、初老の物腰の柔らかな女性が対応し、センター留めになっている荷物を丁寧に手渡してくれた。
洋子さんは車に戻り、配送センター横のコンビニエンスストアの駐車場で、荷物の差出人を確認することにした。
荷物は片手でも持てるくらいコンパクトで、洋子さんが抱えても重さを感じないくらいだった。
荷物の差出人には「株式会社M企画」と書かれており、内容物は「生活雑貨」となっている。何だろうか、出張で必要な荷物だったのだろうか。
出張中なので、荷物を開けてしまってもおそらく夫も怒りはしないだろう。
洋子さんは躊躇なくガムテープを剥がし、中の荷物を見ることにした。
段ボールの中には、女性物の下着が3枚入っていた。
しかし、その下着をよく見ると何かデザインでおかしな部分があるようだ。
ショーツのデザインはレースも使われていて、一見女性用のデザインなのだが、フロント部分に女性用下着にはない、異様なボリューム感があるのだ……。
「混乱する頭で考えたのは、私に着て欲しくて買ったのかなということです。でも、そんな素振りはないし、夜の生活も淡白な方ですから、そうとは考えられない。他の女性にプレゼントするつもりなのかもしれないとも思ったのですが、入っていた納品書を見て号泣してしまいました」
☆次回では、夫の衝撃の性癖と、洋子さんがとった「決断」について詳報する。多様な夫婦関係の参考として読んでほしい☆