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「せっかくの企画が台無しに?」京急蒲タコハイ駅の受難!言いがかりテロにどう対処する?

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講演、メディア出演、執筆などを通じて、炎上の「火消し」からフェイクニュース対策まで幅広く発信している小木曽健氏によるネットニュース分析、推察コラム。

またお気持ちヤクザがお気持ちテロを……とりあえず「京急蒲タコハイ駅」で画像検索して頂くと早いんですが、サントリーが京急蒲田駅を広告ジャックし、駅名も“京急蒲タコハイ”に変更、土日は使用しないホームで酒場イベントもやります、近隣の飲食店ともコラボしますよ、という「タコハイ」の販促キャンペーンをやったんですね。

特に問題のないキャンペーンだし、新型コロナで弱った飲食街も活性化する良い企画だと思うんですが、なぜかこれに「依存症に関わるNPO」が猛抗議。

「駅は不特定多数が利用する場所。未成年、ドクターストップで禁酒中の人、呑めない体質の人もいる。駅名変更など、駅の公共性を完全に無視した愚行であり絶対にやるべきではない」

……どこから突っ込んだら良いのか。公共性のある場所で、飲酒できる施設や酒類広告なんて全国に死ぬほどあるけど、今後それらすべてに抗議していくんでしょうか? そもそもお酒を欲しない人の権利が、他の権利を侵害してまで極端に優先されるのって、どういう理屈ですか? 駅名に至っては企業が敷地内でやる営業活動ですよ。

ホームで実施する酒場イベントも、お金を払わないと入れないエリア限定だし、そもそも蒲田は呑べえの街。本気で禁酒したいなら、石を投げれば立ち飲み客に当たるような街に近づいちゃダメでしょ。それともまさか……禁酒している人のために、蒲田の街全体で酒営業を自粛すべきとか? 今回の抗議ロジックってそういう内容ですけど。サイコパスみたいで怖いです。

あと笑ってしまったのが「朝の通勤・通学に酒類広告は馴染まない」というご高説も仰っていて、これ本気みたいなんですが、広告が馴染むか馴染まないかは貴団体が決めることじゃないので大丈夫です。

ちなみに公共の場においては「見たくない」という権利より表現の自由が優先される(広告も重要な表現行為です)、これは最高裁で決着している話です。

本気でどうにかしたいなら「お気持ちロジック」ではなく、法的な広告規制で議論するとか、関係する議員をガッツリ応援するとか、ちゃんと世間の合意を得られる手順・手段でやりましょう。

悪意がないのが……

実はこの件、先週あたりからSNSでチラホラ話題になっており、サントリーはすでに一部の飾りつけを中止、今後撤去する箇所も決めているとのこと。件のNPOは「自分たちの成果だ」と鼻息荒いんですが、それ、サントリーの

「面倒な人たちに絡まれてしまった。長引くと協力してくれた飲食街に申し訳ない。最低限の対応だけして大人しくさせよう」

という判断ですからね。だってメインの駅ナカ酒場、それに連携する飲食街イベントは予定通り実施するそうなので。うん、よかった。

今回の件って、マーケティング的に「ターゲットじゃない少数の人」が騒いでいるだけで、世間の声もその多くがサントリーに同情的なので、すべてガン無視でも良かった気がします。

数年にわたる新型コロナで、アルコール業界はもちろん、交通機関だってかなり厳しい状況です。また今後の人口減を考えれば、交通機関が「駅名ネーミングライツ」みたいな新ビジネスを展開していくのはとても重要なこと。邪魔しないでほしい。

ノイジーマイノリティの方々って、そのクレームや不買運動に悪意は無いのかもしれませんが、実は悪意がないのが一番タチ悪いんですよね。特に今回なんて、やっていることは表現の自由に対するテロリズムですから。「ワタシが嫌だと思う表現活動は禁止すべき」なんて幼い要求がまかり通るはずないでしょう。

ペットフードの広告はペットロスの人を傷付けるでしょう。赤ちゃんが出てくるCMを辛く感じる人もいます。食事制限で大変な思いをしている人は、食べ物のCMすべてが憎いはず。誰も傷付けない広告や表現ってありえないんですよ。

いつも書いていますが、多様性って「互いの違いを認め合う素敵な世界」なんかじゃなくて、気に入らないもの、受け入れたくないものでも、その存在だけは認める、ガマンする世界です。

だから、自分勝手な基準を振り回して周囲に迷惑をかける人達も、その存在だけは認められガマンしてもらえる。でもまったく相手にしなくてOK。そんな共通認識のある社会を作っていきたいですね。

 

Text:小木曽健(国際大学GLOCOM客員研究員)

※本記事のタイトルはFORZA STYLE編集部によるものです。

 



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