厚生労働省が27日に発表した人口動態統計の速報を見て、やっぱりと思った人も多いことであろう。危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう話す。
「2023年の出生数は過去最小の75万8631人でした。少子化が一段と進んだと言わざるを得ないでしょうね。婚姻数も90年ぶりに50万人を割りました。未婚化も進み、政府の目論見よりも早い想定で少子化が進んでいる印象です」。
20代後半から30代前半の未婚率も年々増加の一途をたどっている状況だ。
「賃金が上がらない現状で子供を育てるイメージが持てないのも無理はありません。少子化対策はもちろん大切ですが、それ以前の問題であるそんな声も聞こえます」。
今回は子どもを欲しいはおろか、結婚をしたいとも思わない、そう話すある女性に話を聞くことができた。
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蓮沼梨花さん(仮名・32歳)は、昔は子どもが好きだったと話す。
「田舎に育ったこともあって、周りに子供も多かったですし、小さい頃は面倒を見るのも好きでした。保育士になりたい…そんな風に思っていた時期もあるくらい。いつかは結婚して、子供を産むと漠然と思っていましたね」。
その思いが変わったのは、上京してからだ。
「実家は裕福ではなかったので奨学金をもらって大学に進学し、バイトをガッツリしながら大学生活を送りました。卒業後に就職。奨学金を返済しながら暮らしています。その日々のなかで、いつの日か子どもが欲しいと思う気持ちはだんだんとなくなっていった、そんな印象です」。
なぜ、変わってしまったのだろう。
「まるでいいイメージが湧かないからでしょうね。田舎の友人たちのなかにはすでに子育てをしている人がいますが、みんなパートをしながらで暮らしはカツカツ。帰省のたびに会っていましたが、会話の内容も子育てで時間がないだとか、お金がないだとか、女ばかりに押し付けられて…とか、いわゆるテンプレ通りの答えが返ってきます。それになんというか、見た目もどんどん老けていくんですよね。自分に時間がかけられないのがリアルにわかります。友人たちの愚痴を聞くのも疲れますし、少なからず親の目もあります。結局、帰省からはどんどん足が遠のいていますね」。
これが30代の現実なのかもしれない。
「地方住まいのままだったら、もしかしたら周りに流されて結婚して出産していたかもしれません。ただ、上京して暮らしているとどんどん結婚からは遠ざかります。正社員として働いていますが、この会社に一生勤められるわけじゃないでしょうし、賃金もさほど上がりません。そのなかで自分以外の誰かの面倒を見るなんてこと、考えられないんですよね」。
梨花さんはwebデザイナーとして働いている。