ハンバーガーメニューボタン
FORZA STYLE - 粋なダンナのLuxuaryWebMagazine
LIFESTYLE ネット・SNS危機管理マニュアル

「私はクルド人が嫌い!」はヘイトスピーチ? とっても難しい「誹謗中傷」と「意見論評」は何が違うのか

無料会員をしていただくと、
記事をクリップできます

新規会員登録
講演、メディア出演、執筆などを通じて、炎上の「火消し」からフェイクニュース対策まで幅広く発信している小木曽健氏によるネットニュース分析、推察コラム。

 先週、自民党の若林洋平議員(参院)が「日本の文化・しきたりを理解出来ない外国の方は、母国にお帰り下さい」とSNSに投稿、一部メディアが「ヘイトスピーチでは?」と報じて話題となりました。

我が故郷サイタマにおける、いわゆる「素行の悪い一部のクルド人」に関する投稿なんですが、当の若林氏は「ヘイトスピーチではない」と反論、殴り合いが続いております。

実はヘイトスピーチの定義って凄く難しくて、しかも「言論の自由」の眉間ど真ん中に突き刺さる話なのに、ちゃんと議論されることが殆ど無いんですね。せっかくなので「揉めそうな発言」の例を見ながら考えてみましょう。例えば、

「クルド人はダメ人間だ」

これはヘイトスピーチですね。特定の人種や宗教、出自などを一括りにして攻撃・侮辱する=ヘイトスピーチ。クルド人全体を雑にまとめ、その存在自体を批判している、まさにヘイト。

続いて、これはどうですかね? ……あ、先に書いておきますが、私は人種で差別する人間ではありません。国籍は関係ないです。そいつがどんなヤツなのか、のみ。このシンプルな説明をご理解頂けない方は、この先は読んじゃダメ。「戻る」ボタンであっちへGO。

ではあらためて。

「わたしはクルド人が嫌いだ」

これはどうですかね? 恐らく多くの方が「これもヘイトスピーチでは?」と判定しそうですが、残念ながら違います。

この発言、実はクルド人を批判しているのではなく、その人の気持ち(なぜ嫌いなのかは知りませんが)を表明しているだけ。人種に対する悪口ではありません。批判でも差別でもない、自分の感情を伝えているだけです。

これは内心の自由に当たる、誰も強制できない、誰も止めらない、罰も与えちゃダメな領域。もちろんこの発言は本人にとってリスクだし、そのリスクはすべて本人が背負うワケですが、だからこそ「ご自由に」なのです。

つまり「~ダメ人間だ」は誹謗中傷で「~嫌いだ」は意見論評。ただ、困ったことに多くのケースでこの2つは混在しています。「クルド人はダメ人間だから嫌いだ」みたいな。SNSで地獄の殴り合いが起きるやつですね。ヘイトスピーチって論じるのが本当に難しいのです。

あらためて、件の議員さん発言を見てみましょう。

「日本の文化・しきたりを理解出来ない外国の方は、母国にお帰り下さい」

うん、凄く微妙。要は「ルールを理解できない外国人は母国へ帰れ」という趣旨ですが、「外国人は皆ルールを理解できないので帰るべき」なら外国人全体に対する誹謗中傷。でも「ルールに従わない一部の外国人は帰るべき」なら意見論評です。日本語の曖昧さがフルに発揮された文章ですね。

そもそも議員さんの立場で、解釈次第で意味の変わる発信をすること自体どうかと思いますが……。

学校教育のせいなのか?

 私たちは学校で「人の嫌がることを言ってはいけない」と習ってきました。が、ややこしいことに「嫌がること」=誹謗中傷とは限りません。「A君はB君より足が遅い」は単なる事実の摘示、意見論評ですが、それでもA君は嫌がるでしょう。学校はそれも「ダメだよ」と指導します。

本来なら、学校で「誹謗中傷」と「意見論評」の違いをしっかり教え、そのうえで相手への思いやり、自分の発言に責任が伴うことまで教えられたら最高、なんですが……残念ながら無理。なぜなら、意見論評だからいいでしょ、と好き勝手に暴れる親子が出現し学校運営が崩壊するからです。

ただその結果、社会のアチコチに「私は傷ついた!」と騒いて相手を黙らせようとする輩が出現し、面倒くさい状況を起こしているのも事実です。ヘイトスピーチの概念は、一部の偏った活動家に与えられたオモチャではないんですけどね。

まずは我々大人が「誹謗中傷」と「意見論評」の違いを認識し、ちゃんと使い分けられる社会を作り、子どもたちに見せてあげるところから、ではないでしょうか。

 

Text:小木曽健(国際大学GLOCOM客員研究員)

※本記事のタイトルはFORZA STYLE編集部によるものです。



RANKING

1
2
3
4
5
1
2
3
4
5