■ビッグマイチェンから、たった1年で生産終了に
実は、日本向けオデッセイの生産終了は、ホンダ初の四輪専用工場として57年も操業していた狭山工場の閉鎖に伴うものでした。狭山工場では、長年にわたってホンダの基幹車種を生産し、世界的に競争力のある技術を培ってきましたが、新世代の生産システムを持つ寄居工場に生産拠点が集約されることになったのです。
この狭山工場の閉鎖は、ホンダの国内生産能力に余剰ができ、四輪事業の収益が低下していたことや、電動化へのシフトに加えて、工場生産自体の脱炭素化の動きを活発化させる必要があったことが原因と考えられます。最新の設備とシステムを持つ工場に拠点を移し、全体を集約することで稼働率を上げ、効率的に生産しよう、というものです。
オデッセイは、2020年11月にビッグマイナーチェンジが実施され、洗練された外観や先進的な装備の数々で魅力が高まったこともあり、2021年には月販1000台〜2000台前後、年全体で2万1000台以上となかなか好調な数字でした。まだまだ売れそう、という流れも感じられていた矢先、ビッグマイチェンから1年ほどでの生産終了には、かなり驚かされました。
■そこそこの売れ行きではあったものの、前途は多難だった
ビッグマイチェンによって、まずまずの売れ行きだったオデッセイですが、モデルとして盤石なのか、といわれると、そうともいい切れない状態でした。最終型となる5代目は「高級ミニバン」市場を狙うモデルとして開発されたものの、この市場では先日新型が登場した、トヨタの「アルファード」「ヴェルファイア」がすでに独占状態。
サイズ的にはエスティマに近いオデッセイは、ゆとりのある空間を持ちながらも、低床化による洗練されたスタイリッシュなフォルムを楽しめる、というのがウリのミニバン。このあたりはアルファードの「威圧感」とは真逆ともいえるウリであり、もちろんオデッセイのスタイルのほうが好みというユーザーもいるのですが、絶対的な流れは、やはりアルファード/ヴェルファイアにあります。ボディサイズがそれなりであることから、ホンダの電動化戦略にぴったり合致するようにも思えません。
この前途多難にも思えるオデッセイを、いったん販売終了したにもかかわらず、しかも内外装を多少ブラッシュアップした程度で(基本設計は2013年のもののまま)再販売するのは、いったいなぜなのでしょうか。