■同じ顔はブランド認知を広げるためだが
フロントフェイス統一化の狙いは、「ブランドとしての一体感を出す」ことにあります。かつての国内市場では、車名を聞けば、どんな形で、どれくらいのサイズで、どれくらいの価格なのかまで想像がつくほど、個々のモデルがブランド化していました。「トヨタ車を買おう」ではなく、「カローラ、マークII、クラウンを買おう」というように、モデルそのものを目指してお客様が買いに来てくれた時代です。
世界全体を考えると、現在販売されているクルマはものすごくたくさんあり、個々のブランドで売っていく販売戦略では埋もれかねません。メーカーが一丸となることで、ユーザーに認知してもらえる可能性を高める、これを狙いとして、フロントフェイスの統一化や、共通アイコン化をしているのです。
メルセデスやBMW、アウディのジャーマン3は、昔からフロントデザインを統一する手法をとっています。BMWの「キドニーグリル」、メルセデスの「スリーポインテッドスター」、アウディの「シングルフレームグリル」など、各メーカーのアイコンをいれこんだフロントマスクは、そのサイズや位置を微妙に変えながら、セダン、ワゴン、SUV、クーペ、ミニバンと、様々な車型へ統一化されています。個々のデザインが「良い、悪い」ということよりも、まずはどこの自動車メーカーかをアピールするほうが重要。デザインがカッコ良いか悪いかは(それも重要だとは思いますが)二の次なのです。
このことは、各モデルの名称からも読み取れます。トヨタや日産、ホンダといった国産車メーカーのように、各モデルに固有名詞を与えるのではなく、メルセデスだとE200、E220d、E350de、BMWだと523i、523d、530eといった具合に、ボディサイズやグレード、パワートレインをイメージできるようにナンバリングされています。各モデルそれぞれの印象よりも、自動車メーカー(ブランド)のイメージを植え付けることを優先させているのです。