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アパレル業界の挑戦者たち

「アパレルは死なない、しかし多様化する」阪急メンズ東京が目指す店作りとは

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昭和世代とミレニアル世代、2つの志向を満たすのがミッション

2011年10月、東京・有楽町に“ジェットセッタースタイルストア”としてスタートしたのが、メンズファッションスペシャリティストア「阪急メンズ東京」です。「世界が舞台の、男たちへ」というコピーとモデルに起用された市川海老蔵のビジュアルは、日本の新しい男像を強く印象づけました。オープン当初のラグジュアリーブランドのラインナップに加え、最近は世界最大のメンズファッション展示会「ピッティ・イマジネ・ウオモ」の主力ブランドにも力を入れています。オープンからの男のファッションの変化や今後の展望について、阪急メンズ東京 店長の山名伸治氏と、6階=サードスタイル担当バイヤーの柴田力嘉氏にお話を伺いました。

左/ジャケット 4万8000円、シャツ 2万1000円、パンツ2万4000円/ソリード
中/ジャケット 9万7000円/ラルディーニ、シャツ 2万1000円/ジャンネット、パンツ 2万5000円/ジャブス アルキヴィオ
右/ブルゾン 6万4000円/タトラス、ニット 2万4000円/991、パンツ 2万8000円/ジーティーアー(すべて阪急メンズ東京 6階=サードスタイル)すべて税別

山名店長が語る、「時代の多様性とファッション」

――山名さんは、この取材のキーである本『誰がアパレルを殺すのか』を読まれてどのような感想をお持ちですか。

山名:とても斬新なタイトルで、アパレル業ではない一般のビジネスマンも読むのではないでしょうか。できれば干場編集長の意見などもお聞きしたいですね。

――メディアなどでは「アパレル不況」と取り上げられることが多いですが、山名さんは現場の最前線でどう感じていらっしゃいますか。

山名:時代が進むスピード感がどんどん早くなってきていて、従来の考え方や手法だけでは対応できないのは確かです。また、お客さまを見ていると、働き方改革を象徴する「ワークライフ・バランス(仕事と生活の調和)」のコントロールの一方で、ソシアル(社会)的な視点や関わりも不可欠で、誰もがワークとライフとソシアルの三角形の中で、生き方を模索している時代だと感じます。そういう様々な試行錯誤と、衣食住の一つであるファッションを扱う店作りは密接に関係しています。

――なるほど。「スニーカー通勤」というスポーツ庁の提案なども、店作りや品揃えに影響を与えますね。

山名:本のタイトルのアンサーではありませんが、私は「アパレルは死なない」と思っています。しかし、ファッションは自分をよく見せるための「鎧(よろい)」から、多様化している社会とともに、実用品や消耗品、機能性など様々な捉えられ方、見られ方に変化しています。IT業やサービス業などが伸長して産業構造の変化とともに自由な着こなしが増えるなど、時代の多様化にファッションが押されているとも感じます。

阪急メンズ東京 店長 山名伸治氏

上昇志向と自分充足志向の中で、売り場は変化を続ける

――そういう時代の多様化は、店頭でも表れていますか。

山名:「阪急メンズ」は東京と大阪の2館体制ですが、東京ではいわゆる良いモノやこだわりがある商品が売れます。たとえば、扇面にカーボン素材を使った扇子は5万円以上しますが、“粋なモノ”として東京のお客さまの知的な部分を刺激して、面白がってくれますし、実際よく売れます。

――大阪はどんな特徴がありますか。

山名:大阪では派手でプライスコンシャスなものが売れますね。また、カスタマイズの需要は年々多くなっていて、スーツやジャケットの裏地やディテールを変える“自分メイド”は年齢問わず人気が高まっています。東西を見ていると傾向が顕著に出て面白いですね。

――阪急メンズを利用する男性の変化はどう感じていますか。

山名:自分は40代後半ですが、いわゆる昭和世代は、会社に入って上司を見て、「ああいう大人になりたい」とか「ああいう服を着たい、いいクルマに乗りたい」という上昇志向で頑張ってきました。一方、ミレニアル世代(1980年代半ばから2003年の間に生まれた世代)は上昇志向もありますが、自分だけ満足していればいいという“自分充足志向”も強く持っています。その2つの志向を満たすのが私たちのミッションでもあります。

――ミッションを果たす上で、必要なものはなんですか。

山名:今大事なのは「ストアコンセプト」と「店の個性化」ですね。私たちは東京と大阪で“メンズとは”を突き詰めて考えています。他とは違うことをするのはもちろん、お客さまへの“見せ方・伝え方・売り方”を磨いていき、新しい価値を創造していきます。今まさに半歩先を見据えた「コンセプト=旗」を立てなければと思っています。

阪急メンズ東京のシンボル的な1階エントランスにて山名店長

男の服飾文化を価値として伝えていく店作り

――阪急メンズが独自運営する6階=サードスタイルが好調とお訊きしました。

山名:ありがとうございます。自分は「サードスタイル」というネーミングも気に入っていて、オンとオフをブリッジする“3つめの新しいスタイル”を提案する売り場です。一流・本物志向のイタリアン・クラシコを大切にしながら、コンテンポラリーな新進ブランドもミックスして、男性の新しいスタイルをプレゼンテーションする品揃えを目指しています。これからの阪急メンズの武器にしていく意気込みです。

――では最後に、男の装いの楽しみ、未来はどこにあると思われますか。

山名:古き良きものを大事にして、定番をしっかり着こなすクラシコ派と、新しいモノが大好きでファッションを積極的に楽しむトレンド派は今後も共存していきますが、この2つに共通するのは「美しさ」ですね。自分らしい自然なスタイルは常に美しい生き方とともにあります。そうして服にある文化=服飾文化を価値として伝えていく店ができたらと思っています。

阪急メンズ東京6階=サードスタイル

柴田バイヤーが目指す、「デザインと着心地の良さ」のアピール

阪急メンズ東京6階=サードスタイル担当バイヤーの柴田氏は、神戸大学を卒業後、2013年4月入社の27歳。大阪店勤務を経て、16年8月にスタートしたサードスタイル担当として東京勤務となり現職。

――サードスタイルのお客さまを見て感じることはなんですか。

柴田:売り場でお客さまの反応を見ていると、ファッション一つで気分が変わったり、自信がついたりという「服の力」を感じるときがあります。自分が好きなものを着て自己表現している人が多いですね。また、取り扱いブランドはイタリアのファクトリーブランドが中心ですが、各ブランドの技術や工夫がとても論理的で、理系的な組み立て方が面白いと思っています。

――ピッティにも行かれていると思いますが、感想を教えてください。

柴田:ピッティは昨秋と今年1月の2回経験しています。会場が広くて活気を感じます。今年1月はファッションのカジュアル化が目立ち、機能素材や作りのソフト化、簡素化などが目立ちましたが、新しいトレンドに取り組もうとしている意気込みは伝わってきました。

――柴田さんと同じ20代の同級生などの着こなしを見て何を感じますか。

柴田:同期はスーツを着て働いている人が多いですが、「もっと自分をよく見せるようにすればいいのに」と思いますね。せっかく中身に力があるのに、その力や自分の魅力を外に出すのがあまり上手くないなと感じます。ピッティに行くと、外国人はブランドも人もブランディングが本当に上手で驚きます。第一印象が大事なことを学びました。

6階=サードスタイル担当バイヤー 柴田力嘉氏

オンとオフの間のスタイルを、男たちに楽しんでほしい

――サードスタイルのアピールポイントを教えてください。

柴田:名前の通り、“オンとオフの間のスタイル”をトータルで揃える売り場ですが、働き方や業種が多様化して、いい意味で曖昧になってきている今の時代のスタイルを提案しています。

――具体的なスタイルはどんな感じですか。

柴田:トレンドではスポーツテイストなどが目立ちますが、ファッションに対してこだわりがある方は、「ジャケットを着てパンツを合わせる」のが根強くあります。サードスタイルでは、ジャケットはラルディーニ、パンツはインコテックスを軸にして、ティージャケットやチルコロ 1901のジャケット、ジャブス アルキヴィオやベルウィッチのパンツ、アウターではタトラスやウールリッチなどが主力ブランドです。

――どんな売り場に育てていきたいですか。

柴田:阪急メンズ東京は、丸の内というビジネス街を背景に持ちますが、オンでもオフでも、さらにその中間的シーンでも着こなせる服のニーズはこれから高まっていくと思います。イタリアものを中心に、デザインと着心地の良さを追求し、大人の男が上品に着こなせるアイテムとスタイルを揃えていきます。


阪急メンズ東京
http://www.hankyu-dept.co.jp/mens-tokyo/

Photo:Shimpei Suzuki
Writer:Makoto Kajii







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