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LIFESTYLE Special Talk

藤竜也からFORZA世代へ贈る
いかしたジジイになる秘訣

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映画『龍三と七人の子分たち』で好演!
そこに至るまでの役者人生とは?

私服&セルフスタイリングで撮影場所に立つ藤竜也は、シャッターを切るカメラマンに対し、いたずらっ子のような表情で「これちょっといいでしょ」と手を差し出した。その手首に巻かれているシルバーのブレスレットをよくよく見ると、食器のフォークでできている。それをはめていた別取材のカメラマンに「かっこいいねえ」とほめたところ、「他にも持ってるのでどうぞ」と取材終わりにプレゼントされたのだとか。それをすぐに装着して喜ぶ74歳、チャーミングとしか言いようがない。

『龍三と七人の子分たち』で、藤は義理と人情に厚い元ヤクザの親分・龍三を演じ、ジジイが活躍する映画として旋風を巻き起こした。続けて、やはり世の中のルールにとらわれない前田慶次というキャラクターでドラマ『かぶき者慶次』にキャスティングされた。「まさか自分が呼ばれるなんて」と驚き、喜んで出演した北野武監督作が、確実に一つの転機になったのだから、人生は面白い。しかし、本人はひょうひょうとして状況を受け入れている。

「映画が年に1~2本、そこにテレビの仕事がふらりと来るのは変わらない。極端にオファーが増えたとかはないですよ。でも、『かぶき者慶次』のように仕事が繋がるのはありがたいね。仕事ってそんなにコロコロと転がるもんじゃないし、そういう仕事のやり方はしたくない。四角いサイコロが、よっこらしょ、バタン、よっこらしょ、バタンとゆっくりと動いていくもの。俳優という仕事に飽きないためには、一つ一つにじっくりと取り組んでいくことが、僕には合っていると思います」

俳優を目指していたわけではなかったが、映画は好きだった。大学時代にスカウトされ、日活の大部屋俳優としてキャリアをスタートさせた。

「もともと通行人から出発したからね。どんな役だろうと真摯に向き合った。日活のその10年間が、『きちんとやっていればなんとかなるんじゃない?』という、自分の基本的な考え方を形成してくれた」

大島渚監督の『愛のコリーダ』に出演するために、日活を辞めたのが30代半ば。その後、約2年間仕事のない時期を過ごして禊を済ませ、『ションベン・ライダー』『友よ、静かに瞑れ』『化身』など、出演作はすなわち主演作というスター俳優として40代を過ごすが……。

「47、48歳の頃かな、秋風がパーッと吹いて、藤竜也のブランドが枯れた時期があってさ。だからやり方を変えて、“どこを切っても藤竜也”みたいな芝居を捨てて、役の方に一生懸命近づくようになりました」

サイコロが進むたびに、確実に世の中に振動を起こしながら、74歳になった。40代の頃、まさかこんな未来を生きているとは想像すらしなかったという。

「70歳まで生きている自信なんてなかったよね。よほど運が良ければ生きてるだろうなって感じだった。ところがさ、生きてるんだよね。しかもさ、死ぬまで乗れる車があるのに、新しいのが欲しくなっちゃって、生意気にも車を買い換えちゃったりしてるからね(笑)」

性格は、刹那的で楽観的。遠い未来の計画はない。一つ一つの仕事にきちんと取り組んだ自負があるから、仕事がない時期も「なんとかなるさ」と待つことができた。『愛のコリーダ』後の空白の2年間について、「時間がたっぷりあったからスカッシュが上手くなっちゃったよ」とインタビューで答えたこともある。40代は、ウィンドサーフィンやスクーバダイビングに熱中した。酒と煙草がよく似合うダンディで色っぽいイメージだけでなく、藤はアウトドア派の一面も持っているのだ。

「大部屋俳優は、『階段から落ちろ』と言われたら、それに対応できる身体にしておかなきゃいけない。あれから今に至るまで、トレーニングが習慣になってるんだろうね。今はウォーキングとストレッチ、筋トレくらいだけど、身体を動かすと30分間くらい、悟りを開いたような気持ちになるんだよ。ただ、ビールを一口飲んだらすぐに現実に戻るけどね(笑)。そもそも運動しないとビールも美味くないしさ」

好奇心も旺盛だ。Huluに加入して新作映画もチェックする。最近は『冷たい熱帯魚』を観て「これはなんだ!」と興奮し、感心したという。北野武作品は全て観ており、「『キッズ・リターン』や『あの夏、いちばん静かな海。』のように素晴らしいものから、『監督・ばんざい!』のようにわけのわからないものまであるから、北野監督という人に惹かれる」そうだ。一冊の本から、大きな影響を受けたこともある。『キンゼイ・レポート』などで女性が自分たちの性を語り出したウーマンリブ・ムーブメントの頃、42、43歳だった藤は何気なく、日本の女性たちの性意識をまとめた本を手にしたという。

「タイトルは忘れちゃったんだけど、それまで僕は、男と女はヨーロッパの騎士とお姫様くらい違う生き物だと思っていたんです。でも、女性たちの告白を読んで、女性を対等に、もっと言えば性ではなく人として見るようになったんです」

40代でやっておけばよかったことも、やって後悔していることも「ないね」と即答する。女性とのラブアフェアに関しても「後悔なんてないよ」。

「すばらしい時代だった。シンドバッドのような冒険の日々(笑)。若いときは女性に対して強引だったけど、だんだん人間関係のややこしさがわかってくるにつれて、遠慮っぽくはなったかな(笑)。やっぱり、若いうちにたくさん女性と交流をもったほうがいいんじゃない? 恥もうんとかかなくちゃね。リスクを引き受けられる範囲で遊ぶのは、いいことだと思うよ」

そしてまたいたずらっ子のようにニヤリとした。

Photo:Kentaro Oshio
Text:Takako Sunaga




『龍三と七人の子分たち』
DVD&Blu-ray 2015年10月9日(金)発売
監督・脚本・編集:北野武
出演:藤竜也、近藤正臣、中尾彬、品川徹、樋浦勉、伊藤幸純、吉澤健、小野寺昭、安田顕、矢島健一、下條アトム、勝村政信、萬田久子、ビートたけしほか
2014年/日本映画/111分
発売・販売元:バンダイビジュアル
(C)2015 『龍三と七人の子分たち』 製作委員会
公式HP http://www.ryuzo7.jp

 




藤竜也『現在進行形の男』(宝島社刊)
2015年10月10日発売
定価:本体価格1400円(税抜)

スクリーンでは常に存在感あふれる姿を見せてくれる藤竜也。常に好奇心に満ち、人生を楽しんでいる俳優の代表としても名が挙がる。「何年経ても変わらぬあの現役感の源は?」謎多きその生き方、素顔を垣間見せた1冊。



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