ジェラルド・ジェンタが手掛けた
IWCのスポーツウォッチとは!?
そろそろ自分らしい腕時計との出会いを真剣に考えている40男の皆様に、『FORZA STYLE(フォルツァスタイル)』がオススメしたい選択肢のひとつが“ヴィンテージウォッチ”です。
その世界は奥深く、手頃な価格で買えるコスパ重視の時計もあれば、果てはオークションで競り落とされる数千万円台の投機の対象となるプレミアムな個体も数多く存在します。実際問題、ヴィンテージって聞くと妙に敷居が高く感じられたり、あまりの人気から偽物が出まわっているグレーな世界であることは否めません。それもあって、どうも二の足を踏んでしまっている方が大勢いると思います。
そこで、この連載では、ウンチクに寄り過ぎず、今どきのファッションにもしっかりとハマる腕時計であることを前提に、絶対にはずさない名機の購入ガイダンスを中心にいくつかの切り口から幅広くヴィンテージウォッチを紹介していきます。
今回はヴィンテージウォッチの中でも群を抜く実用性を持つ、IWCの隠れた名品「ヨットクラブ」について話していきます。
Ref.811AD、1969年製、自動巻き(cal.8541B)、SSケース&ブレスレット、ケース35.5mm径/ 38万8000円(税込)
【問い合わせ】 ケアーズ 東京ミッドタウン店 03-6447-2286 http://www.antiquewatch-carese.com/index.html
愛好家の間では“オールドインター”と呼ばれるIWCのヴィンテージウォッチには、絶対的な人気を持つパイロットウォッチ「マークXI」を筆頭に、優れたスポーツウォッチが存在します。超耐磁時計の「インジュニア」、ダイバーズの「アクアタイマー」、そして「ヨットクラブ」がそれに該当します。
「ヨットクラブ」の魅力を語る前に、ヴィンテージの世界でのIWC、とりわけ自動巻きモデルの特徴について触れておきましょう。
オールドインターの自動巻きを語る上で外せないのが、当時の最高傑作の自動巻きのひとつに数えられる俗に言う“ペラトン式自動巻き”の存在に他なりません。
1944年にテクニカルディレクターとしてIWCに入社したアルベールペラトンが開発した自動巻き機構は、オメガの手巻きムーブメント“30mmキャリバー”と同じように質実剛健を地で行きます。生産性とコストダウンを意識した簡素な設計、抜きん出た耐衝撃性、両巻き上げ式による高い精度、と三拍子揃った紛れもない名機です。この自動巻き機構が備わるオールドインターの個体は、メンテナンスさえ怠らなければ、ヴィンテージでのトップクラスの精度が保証されます。
この自動巻き最高峰のムーブメントを搭載する「ヨットクラブ」は、オーバースペックといえるほどの性能を持ち、実用性という点ではあらゆるヴィンテージウォッチを凌駕するレベルに到っています。
ヴィンテージウォッチが敬遠される理由として、防水性や精度、耐衝撃性などの実用に関する話がよく挙がるのですが、「ヨットクラブ」はこれらの難点のほとんどをカバーします。ペラトン式ゆえ、精度は問題ないとして、ミドルケースにはムーブメントとケースの間に特殊なゴムが付いていることから耐衝撃性は◎。防水性を高いスクリューバックとリュウズが備わっていますが、ヴィンテージということもあり、唯一怪しそうなのは防水性ぐらいでしょうか(笑)。
外装に関しても特筆すべき点があります。「インジュニア」や「アクアタイマー」と比べると地味に見えがちな「ヨットクラブ」ですが、この個体を含む、第三世代のデザインを手掛けたのは、かの有名なジェラルド・ジェンタ。そう、パテック フィリップの「ノーチラス」やオーデマ ピゲの「ロイヤルオーク」を誕生させたあの天才デザイナーです。ケースの独特の丸みやボリューム感に彼らしいスタイルが感じられます。
もうひとつ注目すべき点はカラーダイヤルです。最近、現行モデルでもブルー文字盤がブームですが、この時計が販売していた1960年代後半から1970年代にかけて時計業界はカラーダイヤルの最盛期。そのため、IWC に限らず、各社からさまざまなカラーダイヤルの腕時計が流通していました。
ペラトン式自動巻き、ジェラルド・ジェンタのデザイン、そしてブルーのカラーダイヤルと、この時代の魅力が凝縮した「ヨットクラブ」まさに鉄板。日本人の腕によく似合う36mm弱のサイズ感も、ファッションにもうるさい40男の皆様の頼もしい味方だといえますね(笑)。
Photo:Yasuhisa Takenouchi
Text:FORZA STYLE