こだわりのなかに垣間見える
自然体であることの大切さ
中川 飾らないけれど、お洒落に対してスマート。ミラノだとブランドものを着ているからとか、高級品を身に着けているから格好いい、みたいな感覚が少しありますけれど、ナポリは普通の白パンやセーターでも格好よく見える人が多い。シンプルでベーシックなものを、自分なりの方法で愉しんで着ている印象を受けます。どうすれば自分がよく見えるか、みんな心得ていますよね。
干場 それに、すごく自然体です。人柄も、粋だけど、大雑把で、人懐っこくて、ちょっと狡猾なところもある(笑)。僕らが思い描く、“まさにザ・イタリア”といった世界。僕が自然体といったのは、ジャケットで“ナポリ仕立て”と呼ばれる技法があって、その雨降り袖=マニカ・カミーチャというギャザーを入れた袖山なんか、まさにナポリファッションの本質を表していると思うんです。英国のサヴィルロウのテーラーが肩パッドや芯地を使って男らしい威厳のあるスタイルをつくり出すのに対して、ナポリにはそのままの自然な姿がいちばん素敵なんだという考えが、根底にあるような気がします。
中川 なるほど、そうかもしれませんね。あと趣のあるクラシックなメンズストアも多い。ショーウインドウのディスプレイも格好いいし、接客も丁寧です。店のスタッフに、自分の好きなファッションやよく着るアイテムなんかを伝えると、“これがあなたの肌色や雰囲気に似合うよ”といって、奥の棚からいろんな商品を出してきてくれます。それで相談したりアドバイスをもらったりという、昔ながらのやり方も心地いいですよね。
中川 さっき干場さんのいった自然体って、やっぱりナチュラーレ=エレガンテという感覚なんでしょうか?
干場 そうです。頑張ってお洒落していることを周りに感じさせるよりも、自然体のほうがエレガントに見えるということでしょうね。以前、ナポリの名店と呼ばれる「ルビナッチ」を訪れたとき、2代目当主のマリアーノ・ルビナッチさんとお会いしたんです。それで、“何かおすすめはありますか?”と聞いたら、僕が着ていたストライプスーツを見て、そのスーツに合うポケットチーフを見立ててくれたんです。まず昼用として光沢のないシルクのペイズリー柄のものを胸に挿してもらって、“じゃあ、夜はどうするんですか?”と質問したら、出してきたのがまったく同じような色柄。けれども、光沢のあるシルクのポケットチーフでした。
中川 それは粋ですね。スタイルを変えずに、微々たる差で魅せる。まずは確固とした自分のスタイルがあって、それをシチュエーションに応じて少しだけアレンジするということでしょうか。それ、まさにいつでも自然体でいられるための知恵のようなものかもしれませんね。
干場 光沢のあるポケットチーフというのは、例えばリストランテでディナーするとき、少し暗い照明の下でも華やかに映えるという計算があるんですね。でも、ポケットへの挿し方は、パフドスタイルでテキトーに入れているだけ(笑)。
中川 それがすごく格好よく見えるから不思議ですよね(笑)。
干場 イタリア人って、享楽的だとかよくいわれますけれど、ファッションにおいてもそう。ただ、彼らにおいては、ファッションだけを切り離して考えるんじゃなくて、それがちゃんとライフスタイルの一部になっている。だから、正確にいうと、人生を愉しむ術に長けている、ということになるのかな。それがナポリだと、イタリアのなかでも群を抜いてギュッと濃い(笑)。
中川 それはエスプレッソ発祥の地ですから、かなり濃いですよ(笑)。
干場 確かに(笑)。
Photo:Tsukuru Asada(Secession)
Text:FORZA STYLE
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