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ホントにモヤモヤする!何が正解? 大谷の妻、奥さん、夫人……爆裂的にメンドくさい「配偶者」の呼び方問題

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講演、メディア出演、執筆などを通じて、炎上の「火消し」からフェイクニュース対策まで幅広く発信している小木曽健氏によるネットニュース分析、推察コラム。

大谷サン、突然のツーショット写真で奥様を紹介したもんだから、マスコミはもう大騒ぎでしたね。しかも「結婚相手は誰だ」の泥沼パパラッチが始まる前に先手を打った形となり、メディアコントロールという意味でも、奥様をスマートに守った大谷選手の完全勝利でした。

さて、この騒動で興味深かったのは本件を報じた日本のマスコミが「大谷選手の配偶者」をどう呼んだか、という点です。特に今回は配偶者の素性が公表されていなかったので、当初は「真美子夫人」みたいな「名前呼び」が出来なかったんですよね。

え、じゃあ普通に「大谷選手の奥さん」で良いだろうって思います? それがダメなんですよ。実は近年 「奥さん」「奥様」という呼び方をするとブチ切れる方々がおり、マスコミを悩ませる非常に面倒臭い状況が起きております。具体的には、

「奥さんという言葉は、家の奥、台所にいる人という意味だ、女性差別だ!」

う~ん、実際は「奥方」が変化した言葉なので、上の解釈はちょっと微妙なんですが、「奥さん」ワードを発する度に青筋立てたクレーマーが突撃してくるのは実に面倒臭い。じゃあ別の呼び方を考えようという話になり、「嫁」はダメだぞ、「配偶者」じゃ固すぎる、「パートナー」じゃ無駄に意識高い系みたいで変だ、と悩んで悩んで、悩み過ぎた挙句……なんと一部マスコミが選んだワードは「妻」でした。つ、妻!?

実際「大谷の妻」でネットのニュース検索をすると、そういう見出しの記事が山ほど見つかります。ニュースのランキングが一瞬「大谷の妻~」で埋まったほどでした。正直、字面で見る限りはあまり違和感がないかもしれませんが、例えば職場で、

「山田部長の妻はお元気ですか?」

さすがにこれは変でしょう。気持ち悪いしモヤモヤするの私だけですかね。今回は民放テレビの一部で「大谷選手の妻が~」という言い方をしていましたが、かなり違和感がありました。

ちなみにNHKの朝の番組では、ちょっと前から「○○さんの妻によると」をすでに使い始めているので、下手したらこれ定着しちゃうかもしれません。

他人の配偶者を表す呼び名として、「妻」という言葉自体は間違いではないんですけどね……。

言葉狩りが作る世界とは

要は、なるべく文句や言いがかりをつけられない、かつ文法的にも間違いじゃない言葉を「消去法」で選んだ結果、「妻」しか残らなかったんでしょう。

でも嫁さんや奥さんという呼び名は、自分の配偶者を示す「悪意も含みもない」シンプルな言葉として、すでに世の中に定着しています。嫁さん、奥さんという「呼び名のせい」で、具体的に女性が傷ついたり、不当な扱いを受けることもありえません。もしそんな場面があるとしたら、それは呼び名のせいではなく、そう振る舞う人間のせいです。そんなの言わなくても分かると思うんですが。

誰かの自己満足のための言葉狩りで、使えない言葉が増え、妙な言い回しが生み出され、世の中全体の発言が委縮するなんておかしな話です。「余計なことは言わないでおこう」なんて風潮にもつながりかねない。その弊害はとてつもなくデカいものです。

またそういう面倒臭い人たちのせいで、「女性の為」にちゃんと活動している人たちまで色眼鏡で見られてしまったら、まさに分断でしょう。カンベンして欲しい。

自主規制に走るマスコミも、もう少し頑張って自分からクビを締めに行かないで、とは思うのですが……実際は現場だけで踏ん張れるものではなく、ちょっとでもクレームが入ると、上から「その次」の許可が出なかったりするのは事実なので、まあ踏ん張るべきはメディアの上層部でしょう。

ちなみに「奥さん」は、もともと他人の配偶者を意味する言葉で、「嫁」は息子の配偶者を指す言葉だったので、昔は自分の結婚相手に使う呼称ではなかったそうです。言葉って変化していくんですね。言葉狩りの人たちも忙しくて大変だなあ。

 

Text:小木曽健(国際大学GLOCOM客員研究員)

※本記事のタイトルはFORZA STYLE編集部によるものです。



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