夫の休日に黄昏泣きが始まると、車を出してもらって近所をうろうろしたり、交替であやしたりするため、少しは気が紛れる。また、理性が働くのか、ワンオペの時のように大声をあげたい衝動にもあまり駆られない。
しかし、平日1人になると、気持ちの不安定さに拍車がかかる。あかねさんは毎日訪れていたその「魔の時間」を何とか変えたいと考え、ある日仕事から戻った夫に、このことを相談してみたそうだ。
「1人で子守りしてる時にギャン泣きされると、赤ちゃんに対して怒りが湧いてしまうと話しました。軽蔑されるのが怖くて、つい怒鳴ってしまうとかは言えませんでしたが、ちょっとでも苦しい状況をわかってほしいという一心で相談しました」
しかし、夫の反応は薄かった。
「夫はほんとにお疲れ様、無理しないでと言ってくれましたが、何て言うんでしょうか……どこか他人事でした。それは俺の管轄外だと言われたような気がしましたね。実際、表面的な労いの言葉なんかかけられても、何の足しにもならないので」
あかねさんは、夫の育児への協力度は低いと感じている。夫は出産後2週間の育児休業を取り、あかねさんと共に彼女の実家に戻って育児のサポートをしたことになっている。
しかし、実際には実家でタダご飯を食べ、テレビを見て、時々あかねさんの母親が準備したミルクを娘にあげたり、あかねさんが寝ている間に娘の様子を見ていたりしていただけだという。
「もうそれだけで”自分は役目を果たした、あとは任せた”みたいな顔をしてるのが頭に来るんです。1人でずっと赤ちゃんを見ていなきゃいけないプレッシャーやつらさは、絶対あの人には分かってもらえないと思いました」
ある日、家に帰ってきた夫が彼女に漏らしたのは、母親としての尊厳を踏み躙るような一言だったという。
取材・文/中小林亜紀