物価高騰に不景気。「日本が貧しくなっている」とも言われている中で、多くの人が気になっているのが資産運用。しかし、運用方法や仕組みを理解するのが難しいゆえに詐欺が多発しているのも事実である。今回は、そんな資産運用で詐欺に遭ってしまった女性を実話ベースでレポートする。
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冨山雪（72）は専業主婦である。今は近所のマンションの管理人をしている夫と２人で暮らしている。
「慎ましい生活ですよ。贅沢する余裕はありません。でも去年、孫が生まれたんです。娘が仕事をしている間、子守をするために月数回、東京まで行っています。それが今、いちばんの楽しみですね」
©Getty Images子どもは独立をして、夫は定年後の再就職にも成功している。これは現代の日本ではとても恵まれた環境のようにも思える。
「確かにそうですね。子どもが登校拒否になるだとか、定年後、夫婦の関係が悪化するだとかそういう問題はほとんどありませんでした。息子も結婚して、来年には孫がもう１人生まれる予定です。夫とは、職場だった市役所で出会いました。彼も私もそもそもは公務員です。
私は妊娠をきっかけに休職。復職も考えましたが、お互いすごく裕福でなくても家族で仲良く暮らしていければいいよねという価値観だったので、そのまま専業主婦になる道を選びました。働くことに未練がなかったわけではないけれど、子どもの成長をそばで見ていられたことは、幸せだったと思っています」
雪は子どもが中学生になると着付けの教室に通うようになった。今はそこで、講師助手や着付けの手伝いをしているという。卒入学シーズンはとにかく忙しく、朝早くから５時間以上、立ちっぱなしで着付けを続けることもあるそうだ。
「晴れ姿のお手伝いができるというのも性分にあっているように感じますね。肉体的には疲れるけれど、精神的にはとても幸せ。師範はもちろん、着付け仲間ともいい友人関係で、食事や旅行にもよく行きます。
私は働いていなかったせいか夫に比べるとコミュニティが少なかったから、この出会いに感謝しています。着付けも元気なうちは続けて行きたいと思っているんです」
どこにでもある一般的な家庭、いやむしろ幸せな家庭のように見えるが、雪は最近気を揉むコトがあるらしい。
「半年くらい前かな、着付け仲間とみんなで話をしていたんです。この歳になると話の内容は大体、健康のことか老後のお金のこと。そこである１人がそういえば、と話を始めたんです。それが投資に興味を持ったきっかけですね」
詳しく聞くとそれはFXというもので、彼女はこっそり貯めてきたへそくりを注ぎ込んでいるという。
「はじめは私たちと同じ専業主婦である彼女の口から、投資なんて言葉が出てきてびっくりしました。それにFXなんて、聞いたことはあるけれど、なんのことだかさっぱりわかりません。でも彼女がすごく、生き生きと話をしているのをみて、なんだか面白そうだと思ってしまったんです」
彼女は当初、そもそもは投資信託にお金を預けることを予定していたらしい。しかし、もっと儲かる商品があると勧められたのがFXだったと話した。
「我が家は夫の収入だけでまかなってきました。公務員なので安定しているとはいえ、退職金も1,000万程度。老後2,000万円問題が話題に上がるたび、ヒヤヒヤしていたんです。もちろん貯金が0というわけではありませんが、年金を合わせても目標額には少し足りません。
それにお金ってあれば、あるに越したことはありませんよね。今や、銀行に預けていても昔のように金利はつくことはありませんし、もう少し賢く生きる方法を探していたところだったんです」
彼女はFXを始めたばかりだそうだが、すでに利益が出ているという。その話を聞いて、雪は俄然やる気になっていた。
詳しく話を聞きたいと言うと彼女はすぐに業者を紹介してくれた。電話をくれたのは、タカヤナギと名乗るその女性で、もしよければ会って話しませんかと雪の自宅の最寄駅まできてくれたという。
