「喫茶店でざっくばらんに話をしながら、FXの仕組みについて詳しく話をしてくれました。お恥ずかしながらFXが外国為替証拠金取引の略語だということもこのとき、初めて知りました。
円安と円高という基本のキから話をしてくださったので、本当にわかりやすくて。ただ、素人が高額のリターンを得るのはなかなか難しいので自動売買ソフトを購入するのが得策だという話でした」
タカヤナギは自動売買ソフトを販売している業者はとにかく多く存在していて、詐欺まがいのケースもかなり多く存在すると話した。
「なかでも特に信用できる業者を２社、海外の業者を１社リストアップしてくださって、このどれかで自動売買ソフトを購入すれば、確実に利益が出ると教えてくれました」
ただその日は説明のみ、連絡先を交換して２人は別れた。無理強いしないその姿勢に雪はさらに好感を覚えたという。数日後、着付け教室の仲間と会うと雪以外にもFXの説明を聞いたという友人がいた。みな、口を揃えてとてもいい人だったと話したという。
「その頃、テレビのワイドショーなんかでも投資の話題が取り上げられることがよくあったんです。資産運用を謳うCMも流れていましたし、そういうことをやるのが当たり前、そんな風に思ってしまったところもあります。それにみんなからの評判も上々でしたし、疑う余地がなかったんです」
結局、雪はタカヤナギがもっともおすすめだという国内業者の自動売買ソフトを購入し、FXを始めることにした。スタートの金額は100万円。そのうち、50万円はタカヤナギへの支払いだった。決して安い金額ではなかったが、タカヤナギが海外口座開設の方法からスマートフォンの操作、入金方法、利益の確認までとにかく丁寧に教えてくれたこともあり雪は躊躇なく、その金額を支払った。
「タカヤナギさんはとてもまめに連絡をしてくれました。電話はもちろんですが、LINEもとても頻繁に送ってくれて、安心感がありましたね。それで50万円なら安いとさえ、思いました。それから１ヶ月後くらいでしょうか、スマートフォンで利益が上がっていることが確認できたときは、本当に嬉しかったです。これで老後資金はなんとかなる……そんな気持ちでした」
もう少し高額の入金をしてみては？というタカヤナギの提案に雪は、退職金の残り900万円すべてを入金することにした。
「すっかり信用しきっていましたから。むしろどんどん注ぎ込んで、早く2,000万円貯めたいとすら思っていたんです。今思えば、本当に恥ずかしくてたまりません。こんなに簡単にお金が手に入るはずないのに……」
☆次回では、老後資金のために全財産をつっこんだ主婦に訪れた悲劇的な結末を詳細にレポートする。反面教師として読み進めてほしい☆
ライター 悠木律
