Fishcake(フィッシュケーキ)──ロンドンのシーフードレストランでメニューで見つけた名前でした。引っ越してきたばかりで英国料理にまだ疎かった私は、「魚のケーキ」とはなんぞやと目を丸くしたものです。
後で知ったことですが、フィッシュケーキという料理は世界各国に存在し、姿かたちや材料、調理法も異なります。日本の蒲鉾も英語に訳すとフィッシュケーキですね。
英国版フィッシュケーキはタラなどの切り身とマッシュポテトで出来ているのですが、実は英国のシーフードはとてもレベルが高く、新鮮な魚にこだわった、美味な料理を提供しているお店は少なくありません。スコットランドの港町で食べたスコティッシュ・サーモンのフィッシュケーキはいまだに忘れられないほどの美味しさでした。
実物を初めて目にしたのは、メニューで名前を見てから1年くらい後でしょうか。新しく引っ越した家の近くにロンドンでも有名なシーフードレストランがあり、そのお店のショーケースにフィッシュケーキが入っていたのです。
勝手に想像していたものとは違った「おやき」のような見た目。名物の巨大フィッシュ&チップスを注文するほど空腹ではなかったので1年越しのフィッシュケーキを試してみることに。
作り置きも可能。揚げないで作れます!
タルタルソースが添えられたフィッシュケーキ、見た目はやはり「おやき」なのですが、味はあっさりしたコロッケのようで非常に食べやすく、「これはいいものを見つけた」と思ったのを覚えています。調べてみるとタラ以外にも鱒やサーモンなど他の魚を使ったバージョンもあることがわかりました。
多くの英国人が好きな料理にあげるフィッシュケーキですが、日本人の味覚にも合う料理だと思います。少し時間はかかりますが、調理する前の段階で作り置きしておくことも可能。オーソドックスなタラの切り身を使ったレシピをご紹介します。
①マッシュポテトを作る。鍋に水と塩ひとつまみ(分量外)を入れ、沸騰したら皮をむいたじゃがいもを投入する。
②魚を調理する。鍋に牛乳、ローリエ、皮と骨を取り除いた切り身を入れ、中火にかける。
沸騰したら弱火にして10分煮詰める。
③10分経ったら、切り身を取り出し、キッチンペーパーなどで水気を切っておく。
④じゃがいもがすっと串が通るくらい柔らかくなったら火から下ろし湯を捨てる。弱火にかけ、30秒から1分ほど表面の水分が飛ばす。じゃがいもをボウルに移し、魚を茹でた牛乳を加えてマッシュする。
⑤マッシュしたじゃがいもに、ほぐした魚、みじん切りにしたパセリとチャイブ、すり下ろしたレモン、塩胡椒を加えて手で混ぜ合わせる。味見をして、塩気が足りない場合は追加する。
⑥片手で掴めるくらいの量を取り、ボール状に丸めて表面に小麦粉をまぶす。
⑦溶き卵→パン粉の順につける。
⑧手のひらで優しく押し平らな形に成形する。皿に並べ、ラップをして冷蔵庫で1時間ほど休ませる。前日にここまで作っておき調理する直前まで冷蔵庫で保存しておくことも可能。
⑨油を敷き、しっかり加熱したフライパンに並べる。適正温度かどうか調べる場合はパン粉を油に落とす。パン粉が勢いよく揚がり始めるとちょうどよい。
⑩中火で両面しっかり焼き目がついたらキッチンペーパーで油をきる。タルタルソース、マヨネーズ、マスタードなどと相性抜群だが、岩塩とレモンでさっぱり頂くのもいい。西洋の料理だが、和食器との相性も良い。
《材料》4人分
魚の切り身(タラなどの白身魚) 400g
ジャガイモ 450g
牛乳 300ml
塩 適量
胡椒 適量
ローリエ 2枚
パセリ 2本
チャイブ(or 小口ネギ) 6、7本
レモンの皮 半個分
小麦粉(打ち粉用) 適量
卵 1個
パン粉 100g
植物性の食用油 大さじ4
photos&text: Kohki Watanabe
◆渡邉耕希(わたなべ・こうき)◆
愛媛県出身の1992年生まれ。ロンドンの大学でクラシック音楽を学ぶ。現地でヴィンテージ・アイテムの魅力に取りつかれ、服や靴を中心にアイテムの歴史的背景まで探求するようになる。無類のスイーツ好きが高じて開設したYouTubeチャンネル「The Vintage Salon」にて料理や英国菓子作りを通して日本で実践できる英国的生活を発信している。