日本の服飾業界の重鎮として活躍している、ファッションアドバイザー・赤峰幸生氏。
御年76歳でInstagramのフォロワーは3万3000人超、服飾のみならず、アートや歴史の分野にまで及ぶ博覧強記で、老若男女を問わずたくさんの方々に支持されています。
そんな赤峰氏が語る、誰も教えてくれなかった「紳士服の教科書」。前回のネイビージャケットの着こなし方に続き、第9回目はその番外編。春夏を先取りしたスタイリングを4つご紹介します。
1960年の映画、ルネ・クレマン監督の『太陽がいっぱい』。フランスからイタリアに旅をする船の中の物語です。アラン・ドロン(右)もですが、赤峰さんとしてはモーリス・ロネ(左)がとにかくかっこよくて、非常にインスパイアされたそう。
イタリア南部には、カプリ島やイスキア島、アマルフィ海岸、金の海岸呼ばれるcosta d’oroなど、美しいところがいっぱいあります。
そこのスタイリングにどうしても欠かせないのがブレザー。ブレザーの本家本元は8つボタン一つ掛けのスタイルのものです。これをどういうふうに合わせたらカプリっぽいスタイルになるのかについて、お話していきたいと思います。
【1】サマーブレザー
まず最初に、サマーブレザーを使ったトリコロールカラーのスタイルをご紹介します。
まず最初にご紹介するのは、「夏が近づけば思い出す」というくらい夏に不可欠な、サマーブレザーという白蝶貝のボタンがついたジャケット。
こちらに合わせるトラウザーズ(ズボン)には、夏向けのコーデュロイであるサマーコーデュロイ、もしくはこういったギンガムチェックのトラウザーズです。素材は軽いコットンです。
ここに合わせるホーズ(靴下)は、コットン素材のオフホワイトのものがまず1つ。もしくは赤もアリです。
トリコロールを意識したい方は、胸に赤のチーフを挿すとアクセントになります。こうすることで、ベーシックでありながらも華やかな印象になります。
スニーカーに関しては、ネイビー・オフホワイト・赤の3色のコーディネートなら、コンバースのこの色で合わせれば、もう絶品。全く外しのないベーシックなスタイルになります。
ポイントはインナーをどう着るか。そこで登場した色とりどりのポロシャツは、ほぼ全てラコステのもの! 赤のチーフに合わせて赤のポロシャツもアリですし、ネイビーのブレザーに合わせてサックスブルーやグリーン、オレンジのポロシャツも合います。
最も綺麗なスタイリングは白のポロシャツ。ラコステのポロシャツは、これからご紹介する様々なスタイルにオールマイティに良く合います。
いかがでしょうか。トリコロールカラーが美しい、サマーブレザーのコーディネートです。
【2】アイリッシュリネンのジャケット
お次に紹介するのは、アイリッシュリネンのジャケットです。
芯地がほとんど入っていないので、ペラペラとしていて軽いタイプになります。シングルブレスト(フロントボタンの並びが縦一列)のピークドラペル(尖った襟が特徴のジャケット)です。ちょっと決まりますよね。前が二つボタン、サイドベンツ(背中の両サイドに切れ込みを入れた仕様)です。
こちらのジャケットにはベージュのライニング(裏地)が付いていて、腕についている茶色い貝ボタンと色を合わせているんです。
今回は、ちょっとシックに合わせていきたいところ。シックな感じでさらっと合わせるのにおすすめなのが、薄いピンクがかった赤が入ってるシャツ、もしくは、ブルーの中でも少し明るい色のドレスシャツ。どちらでも結構です。そこに合わせるトラウザースは、濃いめのグレー。
ポケットチーフは、青の色合わせをなさるなら、こちらのような同色系のチーフで合わせるのも一つのスタイル。白いチーフを合わせるスタイルもおすすめです。
足元は、フローシャイムというアメリカのブランドの、コブラヴァンプといわれる袋型の靴です。もうちょっとカジュアルかつドレスのような合わせ方にしたい場合には、白のスエードの靴と合わせます。
軽く作っているジャケットでも、決め方は意外とドレスに近いとのこと。
【3】シアサッカーのダブルブレストブレザー
夏といえばシアサッカーという赤峰さん。シアサッカーとは、ストライプやチェッカー模様の薄くしわの寄ったコットン100%の生地のこと。
今回オススメしたいのはダブルブレスト(フロントボタンの並びが縦二列)のシアサッカーです。インナーにはイタリアンカラーと言われている襟型の白いシャツ。
夏の定番シアサッカーにはイタリアンカラーの白シャツを合わせると清涼感がさらに増します。冒頭でご紹介した映画『太陽がいっぱい』に登場する俳優、アラン・ドロンは襟を出して着ているそう。
トラウザーズには、2つ目のスタイリングでご紹介したグレーよりも、ワントーン明るいグレーでさっぱりと合わせます。
靴はイタリアの靴ブランド・スペルガのグレーのスニーカー。シックかつスポーティ、そしてドレッシーな、夏らしい装いになります。
もうちょっとレベルの高い方はここにグレーのブレイシス(サスペンダー)をつけるのも良いです。また、長袖Tシャツでも合います。仕事着でも十分使えるスタイルです。
【4】カーディガン風ジャケット
最後にご紹介するのジャケットは、昔Y.akamineという赤峰さんのブランドで作ったものです。
前カットはジャケットタイプだけど見た目はカーディガン。インナーにはカプリブルーのシャツで甘めの色合わせにすると、少しリゾートなイメージに近いものになります。もしくは、ネイビータートルネックで合わせるのも良いです。
これに合わせたいのはなんと言ってもファイブポケット(ジーンズ)。靴に関しては先ほど申し上げたように、スニーカーでも結構ですし、レザーのスリッポンも結構。画像にあるのは赤峰さんがよく履くというチェコスロヴァキアのブランド・ノベスタの靴。これもよく合います。
インナーに白のTシャツを着ていただいても結構です。このジャケットは夏場に便利に着られるジャケットのひとつで、ネイビーのアクセントがポイントです。
以上、4つのスタイリングをご紹介しました。
カジュアルであれドレスであれ、色の合わせは基本的には2色です。
靴下も、靴も、全てのものが2色の色合わせというのが、スタイリングを作る基本のキです。今回の記事を参考に、ジャケットのスタイリング、ぜひ楽しんで挑戦してみてください。
Text:FORZA STYLE
プロフィール
赤峰幸生
イタリア語で「出会い」を意味する、インコントロ代表。大手百貨店やセレクトショップ、海外テキスタイルメーカーなどの企業戦略やコンセプトワークのコンサルティングを行う。2007年から『真のドレスを求めたい男たちへ』をテーマにした自作ブランド「Akamine Royal Line」の服作りを通じて質実のある真の男のダンディズムを追及。(財)ファッション人材育成機構設立メンバー、繊研新聞や朝日新聞などへの執筆活動も行う。国際的な感覚を持ちながら、日本のトラディショナルが分かるディレクター兼デザイナーとして世界から注目を浴びる日本人のひとり。