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FASHION 赤峰塾!間違いだらけの洋服選び

ドクトル赤峰が驚いたドーメルの革新的服地とは?

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ジェントルマン道を極めるドクトル赤峰とファッション界のレジェンドたちが、イマドキファッションの風潮やヤワな着こなし、ガッカリスタイルなどをスパッと一刀両断! 男として、あるいは女として、「清く、正しく、美しく」生きるために必要な服装術や、服を着ることの意味・意義をストレートに語り尽くします。

62年を経た新作は、次代を示すラグジュアリーファブリック

みなさんこんにちは、赤峰幸生です。

1957年に発表され、モヘアを使用して一世を風靡した服地「Tonik®(トニック)」から、2019年に登場した、次世代を担う「Tonik® Wool(トニックウール)」へ――。フランスの高級服地ブランド、ドーメル社の5代目当主ドミニク・ドーメルさんが、トレーサビリティー(原料となるパタゴニアウールの農場から製織までの追跡性)が保証された革新的なラグジュアリー服地「トニックウール」の発表のために来日しました。

ドミニクさんは古くからの友人ですが、1999年にCEOに就任以来、革命的で高品質な服地を開発する努力を続けています。その一つの答えがこのトニックウールの開発で、オリジナルのトニックの風合いをパタゴニアウールのみで織り上げ、進化させた服地になっています。

新作トニックウールは、先代トニックのモダン・バージョン

赤峰 トニックウールがいよいよ日本上陸ですね。おめでとうございます。トニックウールで仕立てたスーツの着心地はいかがですか。

ドミニク 今日は日本での発表会当日なので、とりわけ着心地が良いですよ。1957年に作られたトニックはモヘア混ですが、トニックウールは100%ウールで、いわばトニックの“モダン・バージョン”でもあります。自分はマリンブルーが一番のお気に入りカラーですが、今日はトレンドになりつつあるグレーを選びました。

赤峰 いい感じのニュアンスグレーですね。自分はドーメル社とドミニクさんに敬意を表して、オリジナルトニックのブルーのスーツを着てきました。27年目のトニックですよ。トニックには27年間お世話になっています。

ドミニク 赤峰さんにはいつもドーメルを素晴らしく着こなしていただいています。そのトニックのブルーは、男性を美しく見せるブルーですね。今日の快晴を祝しているようです。
 

ウールはワインと同じ。土壌が出来の良さを左右する

赤峰 ドミニクさんはこのトニックウールの開発のために、南アメリカ大陸のアルゼンチンとチリにまたがるパタゴニア地域を実際に訪れたそうですね。

ドミニク 初めて行ったときはどんな土地なのか想像もつきませんでした。クルマでパタゴニアを縦断しましたが、海岸地域に住んでいる人たちは、海からのプラスチックゴミで自分たちの土地が穢(けが)され始めていることをとても心配していました。そこから山の方に移動すると、プラスチックの袋一つ落ちていない、まったく穢れていない美しい自然のままの環境になります。

赤峰 その土地はどういう環境ですか。

ドミニク 赤峰さんはよく、「服地を知るためには動物を見る。動物を知るためには土地と食べものを見る」と言われますが、まったくその通りです。アンデス山脈から吹き下ろす強い風と灼熱の暑さがある土地は、牧草地が広く、干ばつもなく、食べものが豊富にあるというとても素晴らしい自然環境の中で羊が生きています。また牧畜家たちは自然を大切にしながら生活をしていて、自ずと動物も大切に扱われています。エコロジー回帰のための土地だなと感じました。

赤峰 オーストラリアとは随分違うようですね。

ドミニク そうですね。パタゴニアウールはクリンプ(繊維の縮れ)が多く、強く膨らみがあり、服地に仕上げると通気性、保湿性、そして伸縮性を併せ持ちます。毎年限られた量の刈り上げとなる希少性の高い原料ですが、スーツとしての耐久性を高めるためにあまり細すぎないマイクロンの糸を選んで製織しています。

赤峰 トニックウールの服地を初めて見たとき、「これが100%ウールなのか」と驚きましたよ。

ドミニク 素晴らしく肌触りの良い生地に仕上がっているでしょう。私たちが飲むワインと同じで、土壌が良ければ混じり気のないピュアなものが生まれてきます。

環境保護へのプライオリティとトレーサビリティーの保証

赤峰 トニックウールの特徴の一つに、「環境保護へのプライオリティとトレーサビリティーの保証」を挙げていますね。

ドミニク トニックウールはパタゴニアウール原料の選定から服地の織り上げまでの各生産段階がブロックチェーン技術を使って特定、認証されています。

赤峰 具体的にはどういうことをしているのですか。

ドミニク 父が開発したトニックは、メンズファッション界に革命をもたらす生地でした。このトニックウールも革命を目指していますが、ドーメル社の責務として「自然を大切にすること」があります。赤峰さんともよく話をしていますが、ファッション業界は産業界の中でも環境を汚染している大きな産業の一つなのです。

赤峰 たとえばコットン(綿花)の栽培には大量に水を使いますが、水資源の枯渇は世界的な問題になっています。

ドミニク そうですね。これからはファッション業界のすべての人がクリーンな環境を守っていくことに取り組んでいかなければならないし、サスティナビリティーやトレーサビリティーを考えなければなりません。

赤峰 ドーメル社では具体的にどんなことに取り組んでいますか。

ドミニク まずドーメル社として、牧畜業者が完璧な環境で動物たちを大切に扱っているか、児童を使っていないかなどを厳しく審査して、基準をクリアした業者に証明書を発行し、契約をしてから羊毛を提供してもらいます。また、業者とは長い契約を結ぶことで、彼らの安定した収入を保証します。

赤峰 環境を大事にするために、人を大切にすることから始めるということですね。

ドミニク まさにそういうことです。牧畜業者から羊毛を集めた後、ブロックチェーンシステムに羊毛のデータを入れ、最終製品までのすべてのプロセスと情報をシステムの中で管理します。こうしてデータを蓄積することで、ピュアなファッションを目指す世界と、自然を大切にするモダンな繊維を作る世界が融合し、それを具現化したものがトニックウールなのです。

赤峰 素晴らしいですね。羊毛の話ですが、米や野菜を作るのと同じ話です。素材がいくら良くても、今の時代に生きる人の意識やシステムは、これから大きく変えなければいけない。

ドミニク このトニックウールを通じて、どういうメーカーに、どういう小売店に、どういう人を対象にどうアピールするかはこれからです。

赤峰 ドミニクさんは「生地を作る」、僕は「マーケットの人たちに理解を促し、訴える」仕事をしなければなりません。それぐらい価値のある服地だと思います。

ドーメル青山店
03-3470-0251
https://www.dormeuil.com/jp/
 

「ドクトル質問箱」では、赤峰さんへの質問をお待ちしています。こちらforzastyle.web@gmail.comまで質問をお送りください。

ジャパン・ジャントルマンズ・ラウンジ
http://j-gentlemanslounge.com

Photo:Riki Kashiwabara
Writer:Makoto Kajii



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