大人にこそふさわしい優美な着流しコート
2015年にスタートしたラファーボラは、もともとはオーダーメイドのテイラードを中心としたブランド。コンセプトをより深く理解してもらえるようにと、着る人との対話を大切にしてきました。
知る人ぞ知る存在だったこのブランドとの出合いは3年前、WHの製造・販売を手がけるオリエンタルシューズの方の紹介で、編集部にサンプルを持ってきていただいたのがきっかけでした。一見、フツーに見えますが、着てみるとフツーじゃない。何とも言い難い不思議な感覚を味わい、その場でこのコートをオーダーしました。
以前も紹介しましたが、ラファーボラのオーダーメイドは、型入れ、裁断、縫製、アイロンまでをひとりの職人が手により、徹頭徹尾こだわりをもった少量生産。おかげで、完成するまで約1年かかりました。
最近は、既製服の展開も始めたようなので、待たずに済むようになりましたが、当時扱っていたのはオーダーだけ。まあ、何はともあれ、人気に火がつく前に、これを手に入れられたのは役得ですね。ブランド名の「la favola」とは、イタリア語で物語の意味。文字通り、洋服を通して身に着ける人がそれぞれの物語を紡いで欲しい、という想いが込められているそうです。
このコートで、僕が最も重視したのが素材。やや毛足の短いスーパー120’sのビーバー仕上げの生地を選んだのですが、軽くて、肌触りがよく、一度触れたらやみつきになるほど。上品な光沢が、エロさとラグジュアリーな印象を引き立てます。
また、肩を大きめにとることで、セットインスリーブなのにまるでカーディガンのような軽い着心地なのも魅力のひとつ。スーツの上から着ても、まったくストレスを感じません。さらに、背面のベルト位置を高めに付けることで、バックシャンな脚長効果も期待できます。
何でも、つくり手がバイヤー出身の人らしく、全体的にはクラシックな趣なのに、今の空気をしっかりと反映しているのもポイントです。さっき挙げた肩もそうですが、襟なども丸みを帯びた雰囲気で、すごく柔らかに見えるんですよ。ビッグシルエットとまでも行かないけれど、少し余裕のあるつくりになっているため、風をはらむような優雅さを味わえ、着流しコートとして大人の貫禄も手に入れることができます。
既製服もいいのですが、この計算されたシルエットは、やはりオーダーメイドならでは。この冬、大活躍した一着です。
Photo:Ikuo Kubota(owl)
Text:FORZA STYLE