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逆気絶しないための【妻のトリセツ】§1.こわーい真実。妻はなぜ、理不尽なのか

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「妻が怖い」という夫が増えている。
 夫側から申し立てた離婚の動機として注目されているのが、妻からの精神的虐待。司法統計(2017年度)によると、2000年度の6位から2位に急上昇している。
 精神的虐待というと大げさな気がするが、具体的には、いつもイライラしている、口調がキツイ、いきなりキレる、急に怒り出す、何をしても怒られる、口をきかない、無視する、夫の分だけ家事をしない、人格を否定するような言葉をぶつけてくるといった妻の言動を指す。この本を手に取ったあなたには、多少なりとも心当たりがあるかもしれない。
 ほとんどの夫にはその“怒り”の本当の理由がわからないし、たとえ理由を聞き出すことに成功し、解決策を提案したところで、妻の機嫌がよくなることはない。それは、妻の望む夫の対応と夫が提案する解決策が根本からずれているからなのだ。

 そもそも妻の怒りの理由は、「今、目の前で起きたこと」だけではない。過去の関連記憶の総決算として起こるものなのである。
 女性は、感情に伴う記憶を長期にわたって保存し、しかも「みずみずしく取り出す」ことが得意な脳の持ち主だ。日常生活で起こる感情が、さまざまな色合いを帯びており、この感情の色合いごとに体験記憶が収納されているのである。心が動くと、その「感情の色合い」と同系色の引き出しに収納された過去の体験記憶が数珠つなぎになって、一気に引き出される。「感情によって連鎖される記憶」なので、当然、感情が増幅されて溢れる。

 体験記憶を数珠つなぎで引き出すきっかけになる「感情の色合い」は、まさにトリガー(引き金)であり、それにはネガティブトリガー(怖い、辛い、ひどいなどの嫌な思い)と、ポジティブトリガー(嬉しい、美味しい、かわいいなどのいい思い)がある。女性脳は、自らの身を守らないと子どもが無事に育てられないため、危険回避のためのネガティブトリガーのほうが発動しやすい傾向にある。身の周りにいる、自分より力が強い者には、特にそうなる。一方で、全身で頼ってくる小さき者にはポジティブトリガーが発動されやすい。「夫にはひどく厳しく、子どもやペットにはべた甘い」が母性の正体であって、男たちがロマンティックに憧れる「果てしない優しさ」が母性なんかじゃないのである。
 それゆえ、夫にとっては「たったこれだけのこと」で、しかも10年も20年も前の出来事まで含めて、一気に何十発もの弾丸が飛んでくることになる。問題は、怒りの弾丸で撃たれているうちに、夫が徐々に命を削られてしまうことだ。

 夫にとっては、甚だ危険で、理不尽な妻の怒りだが、実はこれ、きずなを求める気持ちの強さゆえなのである。母性本能は、生まれつき女性脳に備わっているもので、恋人時代から「理不尽な不機嫌」の萌芽はあるが、特に周産期(妊娠、出産)と授乳期に強く現れ、子育て中はほぼ継続していく。やがて、男性脳を理解して、男への期待のありようを変えられた女性は、自らの感情をだだ漏れしないようになるが、男に期待し続ける女性は、死ぬまでそれが続くことになる。「怒り」は「期待」の裏返し。夫一筋、家庭一筋の妻ほどこうなる傾向にある。つまり、かわいい妻ほど豹変し、夫一筋のうぶな妻ほど一生それが続くことになる。
 これが、ほとんどの男性が知らない世にも恐ろしい、結婚の真実だ。だから結婚をするならば、愛らしくて可憐でうぶな女性よりも、度量のある女性を選ぶべきなのだ。とはいえ、どんな女性も多かれ少なかれ、「理不尽な不機嫌」の道に一度は足を踏み入れる。男性諸君は、その真実をしっかりと受け止めたほうがいい。

 男にとって結婚の継続とは、女性の母性ゆえの攻撃から、いかに身を守るかの戦略に尽きる。ぼんやりしていたら、生き残れない。家庭を、のんびりくつろぐ癒しの場所だと思ったら大間違い。それは、母親の翼の下にいた時代の「家庭」のことだ。
 本書は、脳科学の立場から女性脳の仕組みを前提に妻の不機嫌や怒りの理由を解説し、夫側からの対策をまとめた、妻の取扱説明書である。戦略指南書と言い換えてもいい。要は、「夫」という役割をどうこなすかはビジネス戦略なのだ。男にとって、人生最大のプロジェクトかもしれない。プロの夫業に徹することで、その結果、妻から放たれる弾を10発から5発に減らそうというのが、本書の目的である(なぜ、ゼロを目指さないかは、のちほど)。
 家庭という最大のプロジェクトを夫がコントロールし、生き残るための手解き書であり、鍵はあなたが握っている。脳科学をベースに戦略を立て、妻のネガティブトリガーを減らし、ポジティブトリガーを増やしてほしい。

 世の夫にとって、家庭の居心地が少しでもよくなることを念じて。

photos:Getty Images

妻のトリセツ』著・編:黒川伊保子 定価:本体800円(税別)/講談社+α新書



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