何が良いかを聞かれると明確には答えられないが やっぱり好きで手放せない
人生には、どうしても手放せなかった服、そう「捨てなかった服」があります。そんな服にこそ、真の価値を見出せるものではないでしょうか。そこで、この連載では、ファッション業界の先人たちが、人生に於いて「捨てなかった服」を紹介。その人なりのこだわりや良いものを詳らかにし、スタイルのある人物のファッション観に迫ることにします。中村達也さんに続いて登場するのは、株式会社スピラーレの代表取締役社長、神藤光太郎さん。
神藤さんが膨大な数を所有してきた中でも捨てられなかった服をご紹介する企画の第5回目は、「シャルべ」のシャツです。
襟も脇の部分も こんなにボロボロになってしまっていますが、今も全然現役なんですよ。
まったく手放さそうとは思えず、汚くなってしまっても変わらず着ています。以前のお取引先様で もうかれこれ10数年前に購入したと思うんですが、日本橋三越さんでお薦め頂いて、買わせて頂きました。
オーダーではなく吊るし(既製品)なんですが、ユナイテッドアローズではお取り扱いが始まっていて、伊勢丹ではまだ展開していなかった頃のものですね。
シャルべのシャツって、「作りに関してはイタリアものの方が優れている」とか言われていて評価は高くないんですが、生地が絶妙で、実はありそうでない生地をエクスクルーシブで作っていたりするんですよ。
袖付けも一本縫いに見えるんですが、よく見ると細かく簿妙にずらして付けられていて、とにかく細かいんですよ。
ただ、この感じを嫌いな方もいて、「シャツとしては良くない」と言われる方もいらっしゃるんですが、僕はシャルべのシャツにファンの方が多いのは ちゃんと意味があると思っていますし、独特な味もあって、襟の雰囲気も好きなのでずっと着続けていますね。
着込んでボロくなるほど、イタリアのシャツよりこっちの方が気に入って、愛着も出てきて好きになっていますね。
あまり買う機会はなく、2枚くらいしか持っていないんですが、もう一枚はまだまだ全然キレイな状態で、こっちだけ激しく傷んでしまっています。
過去にお取り扱いのあったバルバやフライのシャツもたくさん持っていますが、ここまで着込んで傷んでも着ているシャツは稀で、修理してもいいかなと思うくらいお気に入りです。
この感じで着続けると、そろそろ肘が薄くなってきて穴が空きそうなんで、そうなったらお直ししようと思っています。
シャルべのタイも良いとは思うんですが、ギラついた感じがしてしまって、自分は少し苦手で手を出していないんですが、シャツは好きなんです。
「何が好き?」って聞かれると明確に答えられないんですが、着ると具合がイイ。なんかイイ。プロダクトとしての完成度が高いかって言われると、分からないんですが…。例えとして上手くないですけど"屋台のおでんが美味い"というか、"おつな寿司の いなりずしの安定感"というか、トータルバランスで優れているように感じるんですよね。
これからも現役で直しながら着続けますし、手放したり捨てることは決してないと思います。
Photo:Naoto Otsubo
Edit:Ryutaro Yanaka
株式会社スピラーレ 代表取締役社長
クリエイティブディレクターとしてインポーター会社のメンズ部門を統括した実績をもとに、現在は新たなビジネスの準備に取り掛かる。イタリアのニットブランドを皮切りに、日本に魅力的なブランドを持ち込むべく、日夜奔走中。