トトロの"まっくろくろすけ"も愛用?
この時計を買ったのは、かれこれ18年前になります。『エスクァイア日本版』編集部から『LEON』編集部に移籍して少し経った頃でした。
意外に思うかもしれませんが、『エスクァイア日本版』の編集者時代はそんなに高級時計には興味がなかったんです。欲しい腕時計が買えなかったと言うほうが正確かもしれませんが……。
ところが、新雑誌創刊となると広告を集めるのが一大事。当時の編集長だった岸田一郎さんの大号令のもと、ファッション、時計、クルマの3本柱を強化していくことになり、僕も時計の記事を少しずつ任されるようになりました。折しも、当時はパネライの「ルミノール」やIWCの「ポルトギーゼ」といった時計ブームの爆発前夜。徐々に、僕も時計の世界に魅了されていったんです。
ところが、それらの高級時計が流行ってしまうと、途端に別のものに目が行ってしまう天邪鬼な性格ゆえ……。
そのころ僕の格好が、黒のライダースジャケットや黒のベルベットジャケット、ブラックスーツに、黒シャツ、ブラックジーンズなどが多かったこともあったんでしょう。全身、真っ黒スタイルというのが面白いと思っていたんですよね。
そこで、思い出したのが、『エスクァイア日本版』でお世話になったスタイリストの喜多尾祥之さん。喜多尾さんがいつも着けていた時計が、真っ黒なRADOの「セラミカ」だったんです。で、思い立ったが吉日。すぐに買いに走りました。
誰も「セラミカ」に注目していなかった時期だったこともあり、周囲からは「変な時計しているな」とか言われることは日常茶飯事。それでも真っ黒スタイルを貫いたのは、今となってはいい思い出です。
しかも、デカ時計ブームだったこともあり、これは2代目。初代は華奢なモデルでしたが、太めのバングルタイプが気になったので買い直しました。こんなふうにケースとブレスレットが一体化したデザインは、今でもないくらい斬新ですよね。
しかも、セラミックス素材なんで、全然キズがつかないんです。だから、20年近く経った今もピッカピカ。そんな時計は他にないですから。
機械式の高級時計とは、まったく逆のベクトルですが、僕のなかでこれほど印象的だった時計はありません。見るからにギラギラしていて、ブラックとゴールドの掛け合わせもエロそのもの。
あと、この時計を見ていると、1980年代のカクカクしたクルマのデザインを思い出すんですよね。夢見る未来みたいなイメージ……。そういうのもロマンがあって好きなんですよ。
Photo:Ikuo Kubota(owl)
Text:FORZA STYLE