コロナ禍において、帯状疱疹発症者が増加したという話題を耳にしたことのある方もおられるのではないだろうか。
新型コロナウイルスおよびワクチン接種と帯状疱疹との因果関係は証明されていないらしく定かではないが、予防接種の啓蒙も含め、帯状疱疹は近頃よく見かける病気ではある。
もともと帯状疱疹とは、体内に水ぼうそう(水痘)のウイルスが潜伏している場合、大人になって免疫力が落ちた時などに、神経に沿って強い痛みを伴う発疹が出現する病気。
日本小児科学会では「帯状疱疹と水痘は同じウイルスが原因でおこる病気です。帯状疱疹の患者さんとの接触でもうつります」と明記している。
*この記事は取材に基づいた実話です。ただし、取材元のプライバシーに配慮した構成を施しております点をご承知おきください。また、記事中に登場する医師の見解にもあるように、帯状疱疹や水ぼうそうの主な症状として抜け毛や髪質変化があるわけというエビデンスはありません。
・・・・・・・・・・・・・・・
今回話を聞いたのは、何の予兆もなく夫が帯状疱疹を発症したという自営業者の野上雪絵さんさん(仮名)。
初めて目にした帯状疱疹の症状に戸惑った雪絵さんだが、彼女をより窮地に追い込んだのは、その帯状疱疹が11歳の娘にうつったことだったという。
「発疹が強い痛みを伴っているにもかかわらず、夫も私もそれが帯状疱疹だとすぐ気づくことができませんでした。初めて発疹ができてから3日後に、ようやく夫は受診したんです。
眠れず、のたうち回るような痛みがあるのに、蕁麻疹だからそのうち治まる、と最初のうちは自己診断していましたね」
雪絵さんの夫は、赤い発疹が胴体の右半分だけに天の川のように帯状にでき、さらに、発疹は首と耳の後ろにもかかっていたという。比較的重い症状だった。
「皮膚科の先生は、これは痛かったでしょう、よく我慢しました……。と言いたいところですが、我慢したらダメ、と呆れていました。夫の帯状疱疹は首から顔にもかかっていたので、もし視神経などに症状が及んでいたら失明していたかもしれないという話です。
夫は投薬治療を始めて快方には向かいましたが、初動ミスがあったせいか、今も神経痛が残っているんですよ。今回のことで、帯状疱疹は『そうかな』と思ったらすぐに受診しなければならないということを私も学びました」
夫に残った神経痛への心配もさることながら、雪絵さんを不安のどん底に突き落としたのが、11歳の娘に夫の帯状疱疹がうつったことだった。