警視庁が民間と共同開発した「デートレイプドラッグ検査キット」が話題を集めたことは記憶に新しい。デートレイプドラッグとは、デート相手の意識をもうろうとさせ、抵抗できない状態にして性行為に及ぶために使う薬物のこと。
従来薬物鑑定を終えるのに1ヵ月ほどかかる場合もあったが、このキットの開発によって迅速な鑑定が可能となったという。
危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう語る。
「デートレイプドラッグについての認知度は年々高まり、証拠を残すことの重要性や、飲みかけのドリンクを残して席を離れてはならないなどの留意点もよく知られています。しかし、こうした啓蒙が重要である一方、人間関係を育みながら犯罪を防ぐことの難しさを考えると、問題の根は深いといえます」
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今回お話を伺ったのは、大学3年生の息子を持つ母、谷口美香子さん(仮名)。
美香子さんの息子はバイト先で出会った同年齢の女性と交際し始めたのだが、彼女がなかなか息子を信用できず、デートレイプドラッグをあからさまに警戒するため、母として女として、何とも複雑な気持ちを味わったばかりだという。
「息子のお相手とは、一度バイト先の近くのカフェで会わせてもらいました。お相手のお母様は、なかなかしっかりした方のようです。彼氏の親御さんになるべく早くご挨拶しなさいとアドバイスしていたらしく、彼女の方から私に会いたいと言ってくれたんです」
美香子さんは名門といわれる女子大に在学中の彼女と会い、その爽やかで知性的な姿に驚いたという。カフェでは、美香子さんと息子、彼女の3人で30分ほどお喋りをした。
「息子の彼女と会うなんて初めてのことでした。きれいなお嬢さんでびっくりです。あの子は体育会系で無骨な子。どうしてあんな素敵な彼女ができたのかな、なんて。息子は私が彼女と会うなんてイヤだったようですが、彼女の方が私に会いたがっていると、そう言ってセッティングしてくれたんですよ」
彼女と挨拶を交わして他愛もない世間話をし、美香子さんがその場を去ろうとした時、彼女から「少し待っていただけませんか?」と声をかけられた。
美香子さんが待っていると、彼女はどこかに電話をかけ、「ちょっと代わっていただけますか?」と美香子さんにスマホを手渡してきたという。電話口に現れたのは彼女の母親だった。
「声の主はあちらのお母様でした。『世間知らずの娘ですが、よろしくお願いします』と言ってきたんです。学生とはいえ、成人した子供の交際相手の親にわざわざ挨拶なさるって、ちゃんとされているなと思う一方、うーん、ちょっと珍しいのかなと思いました」
彼女の母親は娘に対し、日頃からかなり細かな助言をしているらしい。「今回カフェで会うよう勧めたのも母親に決まっている」と息子は言った。
「なるべく2人きりにならないようにとか、相手の男の子の前で眠らないようにとか、なるべくスマホをしまわせるようにとか、食事やお茶した時に席を離れる時は食べ物も飲み物もすべてない状態でしなさいとか……。ママからそんな注意をされている、と彼女が話してくれたそうです」