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【ASMR】110年前のウール織機〜110years old woven machine still working now.

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マシーンからは喪われてしまった、「温かみ」のある機械の声

110年動き続ける、ウール織機の音色とリズム。
旧式のシャトル織機は、筬(おさ)で整えたたて糸に対し、よこ糸が入ったシャトル(杼・ひ)が往復することによってウールを織っていく織機です。

日本では大正から昭和中期にかけて全国的に普及し、国民の被服環境を飛躍的に向上させましたが、現在では超高速で織れる織機にその場を奪われ、国内で見られる台数は数えられる程度とされています。

ウールの世界三大産地のひとつ、イギリス中部の地方都市、ハダースフィールドで、この時代遅れの機械と出会う機会がありました。


コンピューターでプログラミング制御された現在の織機は、超高速でたて糸とよこ糸を織り込んでいくため、一般人の目にその仕組みは「魔術化」されたように映ります。電子レンジやスマホとおなじで、使っている道具の仕組みがわからない。このことを指して落合陽一氏は「現代の魔術化」と読んでいますが、まさにその通りのことが現代の毛織工場でも起きているのです。

しかし、1910年から動き続けるこの「DOBCROSS LOOM」は、ひとつひとつのボディ、フレーム、油圧系統、糸、ボビン、ペダル、歯車が人体模型のような温かみを有し、そのオイル臭のなかに、産業革命の残り香さえかぐことができそうな気がします。

よこ糸が入ったシャトル。ハンマーで叩かれることによって、超高速で水平方向への運動を繰り返す。

現代の超高速織機は、生産性に優れている一方、ウールという生地の特質である「空気含有率」を削ってしまうリスクがあります。超高速で織られるためにたて糸とよこ糸に圧力がかかり、空気が押し出され、保温性をそいでしまうのです。また、生地にストレスがかかるのため、独特の風合いも色あせるという指摘もあります。

その点、オールドファッションのこの織機は、メンテナンスもふくめ「手間と暇」を要しますが、低速で織られるために生地に温かみと独特の風合いを醸します。110年間休むことなく繰り返されてきたリズムに耳を預けていると、日々のうたかたから解き放たれる心地がします。

なにか大事なことを語りかけてくるような、大きな古織機。これから先もそのリズムを刻み続けてほしいと切に願います。

Video:Kengo Yagawa
Text:Yoshihide Kurihara



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