政府が発表した多子世帯の大学無償化は、子育てをしている夫婦にとって嬉しいニュースだっただろう。
一方、扶養を外れると対象外になるケースも考えられるため「この施策で三人目を頑張ろうとは思わない」「年が離れた兄弟の場合、無償化の対象になるのは一番上の子だけ。少子化対策といえるのか」といったネガティブな意見も目立つ。
出生率が低下していくなか、そろそろ異次元の施策を打たなければ国力が下がっていくのは目に見えている。若い世代には子を産んでもらい、人口減少に歯止めをかけなければならない。
危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏は言う。
「国立社会保障・人口問題研究所が発表した第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)によると、夫婦の理想子ども数は2000年以降ゆるやかに低下しており、平均理想子ども数は2.25人といった結果になりました。
結婚10年未満の夫婦については、予定子ども数の平均値は2人を下回っています。子を多くもたない理由は経済面、年齢、母親の健康問題、育児が得意ではないなどさまざまです。
平均給与が20年間変わらないのに物価の高騰、子どもにかかる教育資金を考えると、子育てはハードルが高いと感じている夫婦は多いですね」
今回は、子どもの数が原因でトラブルになった、一人っ子ママと多子世帯ママとの確執についてリポートしたい。
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佐藤千里さん(31歳・仮名)は、夫と娘との3人家族だ。出身は東海地方にある美しい大自然に囲まれた県で、結婚するまで地元で暮らし仕事をしていた。
転勤で同県に住んでいた夫とは共通の友人を通じて知り合い、そこから交際へ発展した。結婚するまでに時間はかからなかったようだ。
娘が生まれてからは出張が多く激務の夫を支えるべく、6年勤めた会社を退職し専業主婦になったようだ。
そして2歳の誕生日を迎えた頃、仙台への転勤が決まった。
千里さんは4人兄弟の末っ子で、上には3人の兄がいる。兄たちは皆家庭をもって地元で暮らしている。彼らと過ごした幼少期はとても楽しかったが、姉妹の友人を見ると「お姉ちゃんがほしい」と思っていたらしい。
兄の妻たちは、末っ子である千里さんを気にかけてくれ、最初の頃はとてもよくしてくれたようだ。
「小さい頃、4人兄弟で家がとても賑やかだったので、子どもは最低でも二人欲しいと思っていました。しかし、初期のつわりが酷すぎて約3か月の入院生活、体重は8キロも痩せてひたすら点滴でしたよ。
妊娠初期なのでお腹がふっくらしているわけでもなく、赤ちゃんがお腹を蹴るわけでもないので妊娠している実感がなく気持ち悪い日々を過ごしていました。妊娠初期の健康状態が悪すぎたので、第二子を妊娠するのが怖いし、転勤族のため我が家は一人っ子を選択。
妊娠中に入院していた病院のトイレ芳香剤がラベンダーの香りだったんですけど、それからラベンダーの香りがダメになったんです……。ラベンダー系を嗅ぐと、あのときの辛さがフラッシュバックしちゃいます」